味わい深い「ビジネスでは褒められたら恥」の真意 孫子が教える生き残る人やビジネスの心構え

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現実にはその反対のことをしようとする、つまり守りを固める前にやみくもに攻めようとしてしまう経営者が多くいますから、「守りを固めよ」を徹底できていれば、それだけでビジネスパーソンとしては優秀だといえるでしょう。ですが、守ってばかりでも進歩はありません。やはりもう一歩先を目指したいものです。

孫子は、こんなことも言っています。

善く戦う者は、不敗の地に立ちて、敵の敗を失わざるなり。

戦いがうまい者は、ただ守備を固めるだけではなく、敵に気取られぬように着々と戦力を強化し、敵の態勢の崩れを突いて攻撃する。

わかりやすい例は、1950〜70年代のベトナム戦争における、南ベトナム解放民族戦線の戦い方です。通称ベトコンと呼ばれたこの軍は、戦力では自分たちをはるかに上回るアメリカ軍を相手に「負けない」戦いを展開し、ベトナム戦争で勝利をおさめました。

歴史上、「アメリカに唯一勝った国」とも言われるベトナムは、同時に、歴史上もっとも上手に「孫子の兵法」を活用した国でもあります。ビジネスシーンにおいても、同じフィールドで巨大な勢力を持つ企業を相手に勝負をしなければならない場合など、私たちも大いに学ぶところがあるはずです。

孫子の言葉が今に役立つワケ

『孫子』とは、2000~2500年前の中国で書かれた兵法書です。つまり、当時の戦争について書かれたものでありながら、時代や地域を超えて読み継がれ、現代においても戦争をビジネスシーンに置き換え、世界のビジネスリーダーたちの愛読書であり続けているわけです。

『新・孫子の兵法 誰もが「起業家」でないと生き抜けない時代のビジネス戦略』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

しかし、これだけどの時代にも読まれてきた大古典でありながら、今ほど『孫子』が必要とされている時代はありません。それは、いま時代が空前の大転換期にあるため、過去数十年間の前例、つまりあらゆるケーススタディがまったく通用しなくなっているからです。だからこそ、古典という「原理原則」に立ち返って、物事を考え直す必要があるのです。

ビジネスシーンとは、生きるか死ぬかの戦場です。 あなたがもしそこで戦い続けるのであれば、『孫子』から、「絶対に死なないためには、どうすればよいか」の原理原則を、ぜひ学びとってほしいと思います。

田口 佳史 東洋思想研究家

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たぐち よしふみ / Yoshihumi Taguchi

1942年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業。新進の記録映画監督として活躍中、25歳のときにタイ国で重傷を負い、生死の境で「老子」と出会う。以後、中国古典思想研究に従事。東洋倫理学、東洋リーダーシップ論の第一人者となる。著書多数。

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