味わい深い「ビジネスでは褒められたら恥」の真意 孫子が教える生き残る人やビジネスの心構え

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ささいなことですが、私が実践していることがあります。打ち合わせや交渉をするときは、現地に必ず一番乗りをすること。どの話をどんな順序でするか、シミュレーションを重ね、もう勝ったつもりの心境で、相手を待ち受けるのです。

自分の準備不足を露呈する「言葉」

プロならば、褒められたら恥だと思うぐらいでいい。まして、「こんなに大変だったんだ」「すごく頑張ったんだ」と言いふらすなど、自分の準備不足を露呈するようなもので、プロの振る舞いではない。

 故に秋毫を挙ぐるは多力と為さず。
 日月を見るは明目と為さず。
 雷霆を聞くは聡耳と為さず。

こうした孫子の言葉も、そのような戒めの言葉として、読むことができます。

「髪の毛を1本持ち上げたからといって、力持ちとは言わないでしょう?」

「太陽や月が見えるからといって、目がいいとは言わないでしょう?」

「雷の音が聞こえたからといって、耳がきくとは言わないでしょう?」

徹底的に準備をせよ、という孫子の言葉は、つまり「守りを固めよ」ということでもあります。相手に勝つというのは、自分にはコントロールできない範囲の問題もあるので、準備しようにも限界があります。

一方で、自分を負けない状態にしておくこと、守りを固めることは、限りなく自分の思いどおりできます。だからこそ孫子は、まずは守りを固めよと言うわけです。

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