超ヤバい経済学 スティーヴン・D・レヴィット スティーヴン・J・ダブナー著/望月 衛訳~文句なく楽しめる経済学の切れ味と意外性
評者 原田 泰 大和総研専務理事チーフエコノミスト
ベストセラーになった前作『ヤバい経済学』の続編だが、パワーアップしていると言ってよいのではないか。前作と重なる話題もあるが、証拠が補強され、確実と認識できるようになっている。世の中は法律家が考えるようには動かない。人々はインセンティブに反応するから、規制すればそのとおりになるわけではない。本書は、人間はどのように行動するのか、そのように行動する人間を相手にどのような制度設計が必要なのかの示唆を与える。
男女差別が縮小することの影響が複雑であることに驚く。売春の禁止が娼家の主人の仕事を女性から奪うという指摘にはうなったが、確かに、『エデンの東』に出てくる娼家の主人は女性だった。差別の縮小が教師の学力を下げるという分析もある。テレビが女性の社会的地位を向上させるともいう。いわれてみると、テレビは、日本の家庭も変えたのかもしれない。今村昌平監督の『赤い殺意』にもそれを示唆するシーンがある。
医療のコストと治療効果に対する辛辣な評価がある。肺がんの化学療法で延びる寿命は2カ月足らずだという。地位は健康にいい魔法みたいな働きをするようだともいう。確かに、日本の政治家を見ると納得できる。
テロリストを捕まえる方策も議論されている。しかし、テロリストを捕まえるには99%正しくても駄目だという。理由を読んでなるほどと納得する。
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