地球にチリ降り注ぐ小惑星の謎に迫る女性の素顔 産休後すぐに復帰、道半ばでの退職経て…
荒井さんがJAXAを退職したのは33歳のときだった。退職後には、ポストドクター制度を使って国立極地研究所へ。その後は、子育てで研究を離れた人をサポートする日本学術振興会の特別研究員(RPD)制度を利用。有期の研究職の仕事を得ながら、研究を続けた。
そして、退職から約5年後、千葉工業大学惑星探査研究センター(PERC)に誘われた。
千葉工大では、NASAと共同で国際宇宙ステーションから流星を約2年間観測する世界初の「メテオ」プロジェクトも担当した。
通常であれば地球から見上げる流星を、上空300km地点の宇宙ステーションから見下ろして観測する。そうすることで天候に関係なく、1年を通して継続的に流星を観測することができる。同じカメラで、毎年決まった時期に降り注ぐさまざまな流星群を観察することで、異なる流星群の明るさや組成の違いを統計的に理解することができる。
約2年流星を観察した
開発したカメラをNASAに託したが、国際宇宙ステーションに行くはずだったロケットが2度にわたり爆発する事態に見舞われた。3機目でようやく打ち上げが成功。千葉工大とNASAを直接つなぐ司令室から、約2年流星を観察し続けた。
地球に降り注ぐ流星の元は、彗星から噴き出しているダストや宇宙空間をただようダストだ。年間最低でも4万トンを超えるダストが、地球に降り注いでいることがわかっている。
ダストの一粒一粒はほとんどが1mm以下と小さいが、その中の約1割が有機物。地球に降り注ぐ前のダスト成分を分析できれば、生命起源の謎に迫る大きな一歩となる。
荒井さんが率いる小惑星フェートンの科学探査計画「DESTINY+」はまさに、この謎に迫ろうとしている。
ふたご座流星群の元になるダストを噴く小惑星フェートンは、直径数kmの天体だ。地上の望遠鏡では点状の光にしか見えない。また、彗星のように楕円軌道を描いて太陽の周りを回るため、円軌道を回る地球の公転速度との速度差が大きく、ゆっくりと近づくことが難しい天体だ。
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