スペインへ財政危機が飛び火する可能性は低い--ローランド・ベルガー リカルド・ベアハーン氏

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--この環境の中で、スペインの金融機関はどのような形で生き残りを図ろうとしているのでしょうか。

IT技術などの積極導入でイノベーション(革新)に取り組もうとしています。たとえば、当社の顧客には同技術の活用でいわゆる「クロスセル」の比率向上に取り組む銀行があります。同行の利用者が取引をした瞬間、システムを通じて「クロスセル」を働きかける。旅行客が空港のATMでおカネを引き出したことをシステムが認識すると、ただちに旅行客の携帯電話へ「旅行保険はいかがですか」といったオファーが発信される仕組みです。

--最後に改めて教えて下さい。金融市場ではギリシャ危機がスペインへ伝播するのを警戒する声が依然として少なくありません。

スペイン政府は正しい政策を実施に移しています。財政支出削減に踏み切り、公務員給与カットに着手しました。労働市場自由化を通じて労働コスト圧縮にも取り組んでいます。年金制度改革にも乗り出しました。
 
 同国には海外で活躍するグローバル企業も数多く存在します。通信のテレフォニカ、サンタンデール銀行、アパレルの「ZARA」などは国内市場に依存していないものの、“税金”という面でスペイン経済に大きく貢献しています。

ドイツ景気の回復もスペイン経済には追い風です。ドイツからスペインへの観光客増につながるでしょう。スペインの製品輸出にもプラスに働くはずです。

スペイン経済の今後のシナリオをめぐっては「緩やかな成長」と見る向きが多く、改革などをもう少しスピードアップさせる必要はあるでしょう。それでも、先行きについては楽観的です。
(聞き手:松崎 泰弘 撮影:梅谷 秀司=東洋経済オンライン)

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