スペインへ財政危機が飛び火する可能性は低い--ローランド・ベルガー リカルド・ベアハーン氏
--貸し出し債権などを十分に精査して引き当てを行い、その結果次第では一段の自己資本増強が必要だった?
各金融機関のサステナビリティ(持続可能性)もテストする必要がありました。成長余力があるかを見るべきだったのです。
成長余力とは、成熟したマーケットでも競争し、成長できる能力があるかどうか。具体的には、数年にわたって一定の利益水準を維持できるか否か、不良債権が膨らんでも生き残ることができるのかということです。そうした意味で、テストでは資本に対する精査が十分だったとはいえません。
■多くの貯蓄銀行に統合以外の選択肢はない
--スペイン政府は経営危機に陥った貯蓄銀行の統合へ動き出しました。
統合自体は正しい方向といえます。金融機関の店舗数は現在、30%程度の「オーバー・キャパシティ」の状態にあります。「トゥー・スモール・トゥ・サバイブ、つまり生き残るには小さ過ぎる金融機関が多い。
実際の統合には難しい面があります。地方の貯蓄銀行の所有状況が複雑なのです。貯蓄銀行を実質的に支配している地方自治体や地元の有力者は統合を快く思っていません。統合すれば、地域のプロジェクトに対する影響力を持てなくなってしまう。だから、影響力を行使できる金融機関が残って欲しいと考えているのです。
しかし、生き残るために統合以外の選択肢はありません。さまざまなセクターや地域でビジネスを展開していくには、組織を大きくしたうえで、収益源を多様化することが求められているのです。
現在、貯蓄銀行に関する法律を変える方向で話し合いが進められています。法改正が実現すれば、統合後の貯蓄銀行が普通銀行のライセンスを取得し、資本市場にアクセスすることができるようになります。自己資本拡充につながるという点で、望ましい方向といえます。