大ヒット商品の「第二弾」が振るわない納得の理由 統計学を駆使するだけでは需要は読み取れない

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これに加えて消費者の声やマーケティングの効果、競合企業の情報なども入手し、その複雑な関係性をAIなどによって解析できるようになると、需要予測は新たな側面から企業経営を支えられる可能性があるのです。

需要予測は1つひとつの商品ごとに行われます。つまり、市場の変化を迅速に反映することができれば、どんなカテゴリーで市場が動いているかを把握することができます。しかも、数字でその程度感を測ることができるのです。

例えばパンデミックによってマスクの使用が日常化し、口紅の市場規模が縮小しましたが、マスクにつきにくいマットなタイプのものや、薄く色がつく保湿メインのリップバームの需要はそんなに落ちていないといったことは、商品別の需要予測だからわかります。

さらにエリアやブランド、カテゴリーといった単位で売り上げや利益率の見通しも得ることができます。これが企業の描く戦略、目標とする売り上げ計画と乖離しているのであれば、四半期などの実績が出る前になんらかの軌道修正アクションを検討することさえ可能になります。同時に、経営管理の視点ではコストの再配分を検討することもでき、目指す利益を実現しやすくなると考えられます。

需要予測に必要なスキル

つまり、これまで認識されてきた商品供給や「サプライチェーンマネジメント(SCM)」のためだけでなく、より市場に近いマーケティングや営業、さらに経営管理やファイナンスといったビジネスのコアとなる領域の意思決定のためにも、需要予測は使えるのです。

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ただしこれには一定以上の予測精度が必要になりますし、1つの数字だけを提示するのではなく、複数のシナリオを描いてその中でビジネスのリスクをヘッジしていくという新しい考え方が必要になります。需要予測には従来、統計学の知識やデータ分析のスキルが必要とされてきました。しかしVUCAな環境下で経営の意思決定を支援していくためには、さまざまなステークホルダーのミッションや制約を踏まえつつ、議論をリードできるファシリテーションスキルも重要です。

これからの需要予測では、市場、顧客に関するデータを主体的に収集し、その背景を解釈しようとするデータのオーナーシップを持ち、ステークホルダーに予測の根拠をわかりやすく伝える説明責任を負って、経営層を含めて信頼されることを目指すべきなのです。

山口 雄大 コンサルティングファーム需要予測アドバイザー

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やまぐち ゆうだい / Yudai Yamaguchi

東京工業大学生命理工学部卒業。同大学大学院社会理工学研究科修了。同大学大学院イノベーションマネジメント研究科ストラテジックSCMコース修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修了。化粧品メーカーで10年以上にわたり、さまざまなブランドの需要予測を担当。日本事業へ異動した後はS&OPグループマネジャーとして需要予測をベースとしたS&OPプロセスを設計。Journal of Business Forecasting(IBF)や経営情報学会などで需要予測の論文を発表。JILS「SCMとマーケティングを結ぶ!需要予測の基本」講座講師。著書に『新版 この1冊ですべてわかる 需要予測の基本』『すごい需要予測』など。

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