大ヒット商品の「第二弾」が振るわない納得の理由 統計学を駆使するだけでは需要は読み取れない

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また、このりんごアイスが子どもにヒットしたとします。みかんアイスも注目されたのですが、2倍の量を食べるとおなかをこわす可能性があるため、親はどちらかしか買い与えないかもしれません。つまり、「需要が分散した」のです(これをカニバリゼーションと言います)。

ここからわかるのが、需要予測は単に過去データを分析してもできるわけではないということです。高度な数学や統計学を駆使しても同じです。それよりも、需要の背景にある消費者の心理、行動を想像して、それが未来ではどうなるかを考えることが重要になります。市場がVUCAになると、この想像がよりむずかしくなるということです。

需要予測の精度が低下していくと、必要なモノは用意できないし、逆に不要なモノが大量に余るという事態が発生します。ビジネスではこれは売り上げ機会の損失や不要なコストの増加につながり、経営を危うくしてしまいます。

コストをかけ、時間をかけて育ててきたブランドも、品切れが続けば顧客を失いますし、管理コストが増加すれば成長のための投資にお金を使えなくなります。この意味では、需要予測がブランドの成長を支えていると言っても過言ではないでしょう。

さらに近年では、消費者の環境に対する意識が高まっています。これを受け、企業活動には環境負荷の低減が求められるようになり、これが企業価値に影響する時代になってきています。ムダなモノをつくり、水を浪費して二酸化炭素を排出する企業は競争力を失っているのです。 

需要予測における技術の進化

こうした厳しいビジネス環境変化の中で、明るい兆しもあります。それは技術の進歩です。

単なる購買情報だけでなく、消費者の属性、生体情報、そのときの気分など、さまざまなデータがリアルタイムに近く(ニアタイム)とれるようになってきています。この大量のデータを蓄積できるインフラも整ってきていますし、それを解析して人の意思決定を支援できるAI(人工知能)といったツールも登場しました。

需要予測はルールにとらわれないマーケティングや顧客心理と密接に関連するため、単にAIを導入してもその精度が上がるわけではありません。しかし、市場や顧客に精通したプロフェッショナルであれば、AIをうまくビジネスに導入し、VUCAな環境でも新たな価値を創出できるのです。実際、2017年に実施された海外の調査でも、2025年の需要予測に向けて重要になる技術の1位がAIでした。

ビジネスにおける需要予測はこれまで、商品の製造やその原料、材料の手配(調達)、それを小売店や消費者へ運ぶ物流(ロジスティクス)といった企業のサプライチェーン(供給連鎖)のトリガーとして認識されてきました。需要予測を基に、工場の人員や物流センターでのトラックの手配も行われるからです。

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