データを「平均値」で見る人が量産される根本理由 理系教育を「しっかり受けていない」大きな弊害

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大学におけるデータサイエンス教育は、まだ始まったばかりですが、少しずつ変化の兆しが見え始めています。特に大学生の「意識」が変わってきています。

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一般社団法人データサイエンティスト協会のアンケート調査をみると、大学生のデータサイエンティストという職種の認知率は30%でした。他の職種と比較した結果をみると、システムエンジニアの認知率(59%)と比較すると低い水準ではありますが、マーケターの認知率(33%)と比べて大きな差はありません。データサイエンティストは新しい職種ですが、大学生には浸透しつつあると言えるでしょう。

所属学部別の傾向をみると興味深い結果になっています。情報学部などの関連する学部での認知が高くはなっていますが、教育学部や法学部などの文科系においてもデータサイエンティストの認知率は高くなっています。データサイエンティストは理科系の限られた学部にだけ知られている職種ではなく、広く開かれた職種になりつつあると言えるでしょう。

データサイエンティストの将来性は?

このアンケート調査では、大学生がデータサイエンティストに将来性を感じる割合も調査しており19%という割合でした。これはシステムエンジニアに将来性を感じる割合と同水準であり、現役データサイエンティストだけではなく、大学生もデータサイエンティストに将来を感じていると言えます。

これから大学を卒業して、企業に就職する大学生の中には、データサイエンスに関する専門的な教育を受けた人も増えてきます。大学を卒業した時点で、データサイエンスでビジネスを変える素養を持った人たちが就職してくるのです。また、一般教養として、データサイエンスの教育を受けた人も増え、データサイエンス人材の底上げも行われるでしょう。これらのデータサイエンス人材を有効活用できるか否かは、受け皿である企業次第ともいえます。

塩崎 潤一 野村総合研究所 未来創発センター生活DX・データ研究室長

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Junichi Shiozaki

1967年生まれ。筑波大学社会工学類卒業。1990年、野村総合研究所入社。専門分野はマーケティング戦略、数理解析・数理モデル、生活者の価値観など。同社にてデータサイエンスを活用した新規事業の立ち上げに責任者として関与。主な著書に『変わりゆく日本人』、『第三の消費スタイル』など。2019年より(社)データサイエンティスト協会の理事も兼ねる。「NRIデータサイエンスラボ公式YouTubeチャンネル」で情報を発信中。

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広瀬 安彦 野村総合研究所 エキスパート研究員

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1972年、三重県四日市市生まれ。慶応義塾大学文学部卒、青山学院大学社会情報学研究科にて博士前期課程、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院にて博士後期課程を修了。大手印刷会社を経て2001年に野村総合研究所に入社。専門はインターネットによる広報戦略、データサイエンティストの育成、M-GTA(Modified GroundedTheory Approach)を用いた質的研究。明星大学経営学部非常勤講師、日本生産性本部 経営アカデミー講師。「NRIデータサイエンスラボ公式YouTubeチャンネル」で情報を発信中。

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