廃線危機脱出、「ひたちなか海浜鉄道」の奇跡

52年ぶり新駅、地方鉄道再生のヒントが満載

町全体で鉄道を育てていくという意識は、さまざまな連鎖反応を生む。新駅構想が具体化した2011年9月。ひたちなか市へ、市民から寄付金の申し出があった。市内に本社を置く電子部品メーカー、イイダ電子の飯田不二次会長だ。

「その年の春に他界した妻の遺品の中から、貯金、つまりへそくりが出てきまして。手元にあれば、無駄遣いしてしまいますから、『市民の役にたててほしい』と、市長さんに申し出たのです」(飯田氏)。

寄付が新駅建設に一役、湊線とのコラボも

1カ月ほどして、本間市長から連絡が来た。ちょうど湊線に新しい駅を作る構想がある。それに役立ててはどうか--。湊線が、町と復興のシンボルになっていることは知っていた。その発展に使ってもらえるのなら、何も言うことはない。飯田氏は二つ返事で了承した。

家族の遺産を寄付した飯田不二次氏(左)にはひたちなか海浜鉄道から記念碑が贈呈された

金額は非公表だが、市の負担分のうち、無視できない割合を占めたという。それに、市民から寄付金を受け取って、「できませんでした」は許されない。飯田氏の寄付は、新駅の早期実現に向けた原動力のひとつになった。

「以前は車ばかりでしたが、最近は妻の墓参りの時などに湊線を利用するようになりました。高田の鉄橋駅も、この前改めて訪ねてみたんですよ。遠くから来た鉄道ファンの方が大勢乗っていましてね。湊線は色々な人に親しまれているんだなと思いました」(飯田氏)

公的支援や寄付金などによって建設費の目処がつくと、2013年12月の湊線100周年記念式典では、翌年10月1日の開業と駅名「高田の鉄橋」が発表された。こうしたニュースは、支援団体「おらが湊線応援団」の会報はもちろん、市報や地域の回覧板でも逐一市民に報じられた。

「湊線とコラボしたら、面白いんじゃないか」

回覧板を見ながらひらめいたのは、ひたちなか市を中心に大型ゲームセンター「ジャムジャム」を展開している株式会社エービスの西野匠氏だ。高田の鉄橋駅は、ジャムジャムの本店から徒歩5分の場所に設置される。湊線は、「店の近くを通り過ぎる線路」というだけの存在ではなくなった。

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