廃線危機脱出、「ひたちなか海浜鉄道」の奇跡 52年ぶり新駅、地方鉄道再生のヒントが満載

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小中学生を中心に絶大な人気を誇り、コミックやアニメも展開されているカードゲーム「デュエル・マスターズ(通称デュエマ)」。このゲームを、湊線の列車の中で好きなだけ遊べたら、子ども達は大喜びのはずだ。

企画をゲームの版元であるタカラトミーに持って行くと、「それは面白い」と、トントン拍子に話がまとまった。海浜鉄道はもちろん、アニメ版を制作している小学館集英社プロダクションの協力も得られ、デュエル・マスターズのキャラクターをラッピングした「デュエマ列車」が実現した。

駅の新設がきっかけとなり、人気カードゲームとタイアップした「デュエルマスターズ列車」も実現

10月5日には1日列車の中でゲームをプレイできるイベントが開催され、小中学生を中心に全国から250人あまりが参加した。キャラクターをデザインした1日乗車券や、キャラクターのフォトスポットなども来年1月までの予定で用意され、湊線の新しい名物となっている。

地域を代表するメディアへと育成

開業から1カ月。高田の鉄橋駅の利用者は、開業人気もあり予想を上回る1日100人程度で推移している。柳が丘地区からは700メートルほど離れている、周辺に駅の案内が少ないといった課題はあるが、通勤通学だけでなく、買い物に利用する人もいるなどおおむね順調だ。

各車両には高田の鉄橋駅開業を祝う特製のヘッドマークも

なぜ、ひたちなか海浜鉄道の取り組みはうまくいくのか。

もちろん、首都圏から1時間あまりの場所に位置するローカル線で、おさかな市場やひたち海浜公園といったスポットに恵まれているという地の利も大きい。だが、吉田千秋社長は、ひたちなか市民の気風も大きいと説明する。

「日立製作所などの企業が多く、外から引っ越してくる住民が多いため、考え方に柔軟性がある。コスト意識はシビアな反面、ひとたび面白いと思えば前例のないこともどんどん受け入れてくれる」。

現代は、地方鉄道が鉄道の利便性だけで収益をあげていくのは難しい。地域の人々にとって利用しやすい交通機関に育て、同時に地域を代表するメディアとして、誰でも鉄道を活用できる環境を整えていく。ひたちなか海浜鉄道の取り組みには、地方鉄道が生き残る多くのヒントが隠されていると言えるだろう。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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