実は、季節性は日本に限った話ではない。世界およびアジアの流行のパターンは、日本と同じだ(図2)。
このような事実を考慮すれば、今春および今夏にも流行すると考えるのが自然だ。昨春は3月末から感染者が増え、ピークは5月14日だった。昨夏は7月初旬から感染者が増え、8月25日がピークだった。今年も、このような時期に流行が再燃するだろう。
さらに、認識すべきは新たな変異株が流行する可能性だ。昨春の流行の主体はアルファ株、昨夏はデルタ株だった。さらに、今冬はオミクロン株だ。いずれも感染力が強く、さらにワクチンに耐性を示した。今回の流行でも、すでに感染力が強いオミクロン株BA.2という亜種の国内感染が確認されている。
変異株の多くはインドや南アフリカなど途上国で感染が拡大する。ワクチン接種が進まないため、大流行を起こすからだ。イギリス・オックスフォード大学が運営するデータベース「Our World in Data」によれば、2月25日現在のアフリカでのワクチン接種完了率は12.8%にすぎない。大流行による集団免疫の獲得を期待する声もあるが、世界の専門家は、途上国でのワクチン接種が進む2024年までコロナの流行は続くと予想している。
いま打つと6カ月後に効果は薄れている
以上の事実を考慮すれば、今春と今夏は、わが国で新たな変異株が流行すると想定して準備を進めたほうがいいと私は考える。
ところが、わが国の議論で、そのような気配はまったくない。2月7日、岸田文雄首相は、2月末までに1日当たり100万回の接種を達成できるように後藤茂之厚生労働大臣に指示しているし、読売新聞は2月26日に「コロナ「第6波」高齢者への追加接種を急げ」という社説を掲載し、政府の姿勢を支持している。
オミクロン株の流行はすでにピークを越えている。追加接種を急がずとも、急速に収束するだろう。一方で、いま追加接種を打てば、6カ月後の夏の流行までには、ほとんど効果はなくなっている。
実は、この状況は現在の第6波と同じだ。昨年、わが国で高齢者の接種が本格化したのは5月だ。多くの高齢者が夏までに接種を完了した。現在、それから半年以上が経過している。このころに接種を終えた高齢者の免疫はすでに低下している。
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