ところが、日本は追加接種を進めなかった。2月25日現在の日本の追加接種終了率は17.4%で、主要先進国(G7)で最下位だ(図3)。このことが、オミクロン株の感染が拡大し、少なからぬ高齢者が犠牲となったことに影響している。
これは、厚労省や専門家の判断ミスだ。私が注目するのは、昨年9月17日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会での脇田隆字・国立感染症研究所所長の発言だ。脇田氏は「追加接種の必要があるということが直ちに断定できるのかということは、現状のエビデンスで本当に言えるのかというところは、私も少し留保したい」と見解を述べ、追加接種開始を見送った。
国立感染症研究所は、厚労省の「施設等機関」(関連施設)だ。その発言は医系技官の意向を反映したものだろう。医系技官と周囲の専門家の総意と考えていい。
残念ながら、この判断は専門家としてはありえない。それは、この時点で、日本を除く主要先進7カ国すべてで追加接種は始まっていたからだ。さらに、昨年7月には、イスラエル政府が、2回目のワクチン接種から時間が経つと抗体価が低下し、デルタ株の感染を防げないことを報告していたし、アメリカ・ファイザーも追加接種により抗体価が5~10倍増加することを根拠に、欧米の規制当局に追加接種を承認申請する方針を明かしていた。
この春以降の流行対策をどうするか
昨年5月21日はウォール・ストリート・ジャーナル日本語版が「コロナ免疫強化、追加接種は必要か 検討急ぐ欧米諸国」、7月1日には、ロイターが「英政府、ワクチンの追加接種を検討へ 高齢者などに3回目」などの記事を配信している。日本の議論が、世界標準から逸脱していることがおわかりいただけるだろう。その後、政府が追加接種を遅らせた理由に掲げる、2回目接種終了後から6カ月あるいは8カ月という間隔は本質的な問題ではない。
いま、われわれが議論しなければならないのは、この春以降の流行対策だ。世界では、すでに議論が始まっている。効果については懐疑的な意見があるものの、イスラエルでは4回目接種が始まっているし、アメリカのファイザー・ドイツのビオンテックはオミクロン株用のワクチンの臨床試験を開始した。
では、わが国ができることは何か。それは追加接種を有効に活用することだ。オミクロン株の流行が峠を越えたいまこそ、追加接種の時期については、冷静な議論が必要だ。
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