英国名門大生の知性は「共同生活」で磨かれる 日本の忍者マンガやラーメンも「創造」の材料に

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残念ながら、そのときの「オタマジャクシの脳×半導体の研究」で実行可能なアイデアは生まれなかったが、互いの知的好奇心を満たし見識を広めるには十分な時間だった。始まりは、某人気忍者漫画の主人公が食べてる「ラーメン」という食べ物を食べてみたいという彼の一言だったのだが、結果的にとても興味深い学術交流につながった。

ケンブリッジではこのような分野横断型の議論の場を非常に重視している。私の所属していた物理学の研究所であるキャヴェンディッシュ研究所の周りには、関係する分野の企業や研究所が隣接し、その中心に議論の場となるカフェが設置されていた。DNAの「二重らせん構造」の発見によりノーベル賞を受賞したワトソンとクリックも、ケンブリッジのパブでの議論でアイデアを得た。町の中心部にあるそのパブはひとつの観光名所にもなっている。

古代哲学から医学はもちろん、音楽学部まであるケンブリッジでの学生生活は、日常的に横割りの議論を可能にするカレッジ制によって、好奇心の赴くままに新しい知識に触れることができ、同時に他分野間の掛け算によって生まれるアイデアにあふれていた。

「株式会社」も「www」も英国生まれ

イギリスという国は「人の生み出したアイデアの力(The power of idea)で世界を変える」ことに対する強い好奇心と、それを実践する伝統のある国だ。物事の原理・仕組みを発見・創出してきており、それらは今でも多く、世界の根本にある。

例を挙げればキリがないが、サッカー、ラグビー、ボクシング、ゴルフ、競馬、モータースポーツ、卓球など多くのスポーツ、「株式会社」「議会制民主政治」「産業革命」、大規模な「国営郵便制度」や「鉄道」、ケインズの「マクロ経済学」、ニュートンの「物理学」、ダーウィンの「種の起源」、20世紀から飛躍的に発展したエレクトロニクスの担い手である「電子」の発見、遺伝を担う「DNAらせん構造」の発見、「wwwの概念」などがある。

日本より小さなヨーロッパの島国、そこに生まれた人々が世界に与えた影響は大きい。私のオックスブリッジ (Oxford+Cambridge=Oxbridge)での学生生活は、新たな道を創る環境とそれを実現しようとする人材に囲まれ、Power of ideaの源流に触れるものであった。

次ページアイデアを生む発想力はなぜ貧弱になるのか?
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