方向性の相違から、ドル円は来年125円視野 BBHのマーク・チャンドラー氏に聞く

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――米国の雇用は順調に回復してきましたが、インフレ率は2%の目標には達せず、下振れぎみです。

2点ある。第1に、CPI(消費者物価上昇率)総合はエネルギーと食品の価格下落により下がっているが、重要なのはCPIコア(欧米型コア、エネルギーと食品を除く)だ。第2に、住宅コストが上がっている。住宅価格が上昇しているので、帰属家賃も上昇してくるとみている。

失業率は目標(6.5%までゼロ金利を続けるとしていた)を超過達成している(今年10月5.8%)。失業率とインフレ率はトレードオフの関係にあるので、インフレ率が低下する余地は少なく、改善してくる可能性が高い。FRBが注視しているコアPCEデフレーター(個人消費デフレーター)が下がっていくことは考えにくい。

米国の利上げのターゲットは2.00~2.50%

――FFレート(政策金利)引き上げのターゲットとなる水準は?

前回のピーク(グリーンスパン時代)は5.50%だが、とてもそこまではいかない。私はインフレ率程度で、2.00~2.50%と見ている。達するのは2017年の半ばぐらいだろう。

――市場のコンセンサスは3%台なのでは?

市場の見方には疑問を持っている。これまでも高すぎる見通しが修正されてきた。また、市場が参考にしているFOMC(公開市場委員会)のドットチャートや議事録は地区連銀総裁も含めたFOMCメンバー全員の見通しを入れているので、市場に誤解を与える内容となっている。FOMCにてリーダーシップを取っているのは、イエレン議長、副総裁のフィッシャー、NY連銀総裁のダドリーで、そのメッセージは声明文に出ている。3人の発言から判断すべきだ。

――利上げが十分に出来ていなければ、次の景気後退が来たときに、対応できないのではないですか。

米国経済が悪化する場合のトリガーが何であるかによる。2008年の金融危機はかつてない大きな落ちこみだった。だが、通常のリセッションであれば、1~1.5%の利下げで対応できるものだ。それよりも、足元で再び、金融緩和が必要になるような事態、QE4は避けたいというのがFRBの総意だと思う。

――ピーク時の金利が2%台と言うことは米国経済そのものに弱気ですか?米国の潜在成長率をどのくらいと見ていますか。

成長率は労働力と生産性の2つの要素で決まるが、2.5%ぐらいだろう。労働力の伸びが1%程度で、生産性の上昇も1%台と見ている。

米国は、出生率が2.1人で、他の先進国よりは維持できているが、移民の伸びがかつてよりも落ちるし、高齢化も進んでいるので、労働力の伸びが鈍化する。

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