日本の医者 中井久夫 著
医学界に対する厳しく温かい分析、批判、提言を続けてきた著者が1960年代に発表し、「幻の名著」とも呼ばれてきた3作を復刻したものである。「日本の医者」「抵抗的医師とは何か」「病気と人間」の3部からなり、医学界の現状(当時の状況というべきだが)、医者としていかに生きるべきか、どう行動すべきか、そして病気とは何か、医療とは何か、等々が懇切丁寧に述べられている。
医療技術は劇的な進歩を遂げ、医療制度には修復が難しいほどのほころびが生じているとはいえ、医療の現場が抱える問題点は基本的に変わっていないといって差し支えない。であればこそ半世紀前に投じられた問題提起と提言が、今なお重要な意味を持って迫ってくるわけで、ここから本質的で新たな議論が広がることを期待したい。平易で読みやすいが、さすがに時の流れを感じさせられる記述も散見される。著者の解説に加え第三者による解題があればなお良かった。(純)
日本評論社 2100円
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