移行期的混乱 経済成長神話の終わり 平川克美著 ~過去の歴史は参考にせず原理的な問い返しが必要
現在の日本は100年に一度の移行期に直面している。それは単にリーマンショックによる100年に一度の危機というだけでなく、もっと深い意味を持っているのだ、と著者は言う。
これまで『株式会社という病』や『経済成長という病』などという本を書いてきた著者が、100年に一度という移行期に直面して日本がいかに混乱しているかについて、人口の減少や高齢化、格差の拡大、自殺の増加、倒産の増加などの問題を挙げながら詳しく説明している。
とりわけ人口の減少について「日本の歴史が始まって以来、このような長期的かつドラスチックな人口減少は経験したことがない」とし、人口学者であるエマニュエル・トッドの議論を引用しながら説明しているところは説得力がある。
日本がそのような大きな時代の移行期にあるにもかかわらず、政府の要人や財界人たちは、いかにして人口の減少をとめるか、そしてどのような経済成長戦略をとるか、ということに力を入れているが、これはまったくナンセンスだという。
戦後の日本経済を1956年から73年までの高度成長期、74年から90年までの相対的安定期、そして91年から2008年までの停滞期と三段階に分け、平均成長率が段階的に下がっていった状況を2章、3章、4章で詳しく検討しており、その結果、現在は移行期的混乱に陥っているのだという。
では、どうするべきか。それに対する答えは簡単には出てこないし、出てくるはずもない。この移行期的混乱では過去の歴史はあまり参考にならない。そこでは人びとはなぜ「こんなふうに考えるのかと考え、どう考えてはいけないかという原理的な問い返しをすること以外に、わたしたちの立ち位置を確認することができない」という。
ひらかわ・かつみ
リナックスカフェ代表取締役。1950年生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒業。渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立した後、99年シリコンバレーでBusiness Cafe,Inc.の設立に参加する。
筑摩書房 1680円 262ページ
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