北朝鮮は「食料不足」から脱却したのか 現地専門家は「穀物生産は増勢維持」を強調

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果樹でも、江原道の高山(コサン)果樹総合農場の建設・拡張工事を進め、成果を上げている。また野菜やキノコの生産を増やすため、「野菜温室」の拡大に注力している。野菜温室は7000カ所に上り、四季を問わず、野菜を供給できるようになる。

なぜモデル型の協同農場、畜産、果樹を志向するのか

――農業の各分野でモデルをつくってそれを全国に広めようという方針がみてとれる。なぜ今になって、このような事業が可能になったのか。

これまで、変化する環境に対応できず問題が生じていたのは事実だ。それを、今年2月6日に金正恩第1書記が全国農業部門分組長大会を開催し、この大会に寄せた金第1書記の書簡の中で、農業発展のためにやるべき具体的な指示を出したことが大きい。

北朝鮮南部・黄海北道の沙里院(サリウォン)市にある、米谷(ミゴク)協同農場。担当者によると、目標生産量は「1ヘクタール当たり11トン」だという

それは、「主体(チュチェ)農法の要求に即して、農作業を科学的・技術的にとらえることであり、二つのことからなる。一つは優良品種の導入面積を早く広げることだ。これは昨年から行われており、すでに効果が実証されている。

次に、ウリ(われわれ)式農業をより発展させるための研究と農業経営の方法を確立させることだ。これは、集団経営と個人の責任をどう組み合わせて行うべきか、ということだ。これは、「分組管理制」(北朝鮮の協同農場における最小単位であり、おおよそ20〜30人を1組として農作業を行う制度)をより強化する方向で、分組を基本として農業が行われるように再度方向性を確認したということだ。

さらに、全党(労働党)、全軍、全国民が農業に関心を持つようになり、国家的な農業への投資をより拡大するための措置が執られた。これはすでに、今年7月までに目標を達成できた。農機具などの機械はもちろん、特に肥料は「苦難の行軍」(1990年代後半の深刻な経済危機に面した時期を北朝鮮ではこう呼ぶ)時期以降初めて、十分に用意して生産に取りかかることができた。

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