北朝鮮に消費ブームがやって来た 副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで
「日本でも米国でも、投資してくれるなら大歓迎」。昨年、北朝鮮国内に経済開発区を設置することを決定した北朝鮮の金正恩政権。その実務を担当する、対外経済省国家経済開発総局投資処の金正植課長は、そう断言した。しかも、「日本側が希望するなら、経済開発区の一つや二つの運営を、日本企業にまかせてもよい」という発言まで付け加えた。
「苦難の行軍」とはすでに決別
金正恩第1書記が政権を担い始めてまもなく2年。北朝鮮経済はこれまでにない動きを示している。その動きでもっとも目立つのは、対外的な経済活動だ。
その先鋒が経済開発区だが、北朝鮮とは国交がなく、さまざまな問題を抱える日本に対し、リップサービスぶんを差し引いたとしても、あまりにも強烈なラブコールだった。最後に、金課長はこう述べた。「もし日本企業がわれわれの経済開発区に投資をしてくれれば、今後進む日朝国交正常化交渉にもよい前例となる」。
2014年9月下旬、記者は北朝鮮を訪問した。
昨年、一昨年と3年連続の訪朝となった。訪問地はほぼ平壌とその近郊だけ。とはいえ、訪れるたびに自動車は増え、街を行き交う人たちの足取りも軽く、表情もやわらかくなった。
特に女性たちの服装は徐々に華やかなものになり、若者たちは携帯電話を片手にデートをしている光景もしばしば出くわした。1998年にも訪朝経験がある筆者としては、「苦難の行軍」と呼ばれる厳しい経済事情にあり、市内を通る車はほとんどなく、平壌市民は誰もが険しい表情で歩いていたころを知っている。当時と比べると、雲泥の差だ。
冒頭の経済開発区の現状については、「総合的な計画立案の最終段階」(金課長)との説明を受けた。北朝鮮は昨年13カ所の経済開発区の設置を発表、今年になって6カ所を追加した。そのために、それまでの貿易省をはじめ関連省庁を統合、今年5月に「対外貿易省」を設置して経済開発区を中心とする投資の誘致を本格化させている。
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