北朝鮮に消費ブームがやって来た

副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで

では、海外は北朝鮮にどれほどの関心を示しているのか。ちょうど記者が平壌を訪問していた時に開催された「第10回平壌秋季国際商品展覧会」(9月22~24日)が、それを教えてくれた。

北朝鮮メディアは、この展覧会に「約20カ国、300社を超える参加があった」と報道した。平壌市内の産業博物館である三大革命展示館内の2棟をつかって開催されている会場に足を踏み入れた。

中国企業が出したブースがとても多いようだが、参加企業数は報道通りかもう少し多いような状況だった。他にもシンガポールやオーストラリア、台湾、スイス、ポーランド、モンゴルの企業も参加していた。会場は平壌市民、特に女性たちが多く押し寄せいていた。

参加企業の業種を見ると軽工業関連が多く、化粧品や健康食品、医薬品、文房具、靴などの皮革製品、宝飾品、LEDなどの家電、タブレットPCなどIT製品も目についた。また、発電機や太陽光パネルメーカーも参加し、これらの企業には多くの人が立ち止まって米ドルや人民元で商品を買い求めていた。

「生産、販売、利用が公式に許可された先端情報技術製品」との垂れ幕をつけて、北朝鮮国産の「普通江」というUSBメモリーが販売されていた。8ギガバイトのもので8ドル。「1年間品質保証」を強くアピールしていた。

化粧品に群がる平壌の女性たち

また、「美白効果が5倍に!」といったコピーとともに、化粧品や健康食品なども売られていた。特に、「春の香り」ブランドで北朝鮮では有名な国産化粧品のブースでは、多くの女性たちが矢継ぎ早に係員に質問し、20~30ドルほどのセット商品を買い求める姿も印象的だった。

このような光景を見ていると、「展覧会」というよりは(商品の)「即売会」の性格が強い。東京や北京で開催される見本市とまったく変わりはなく、「貧しい国」とされる北朝鮮の国民が、たとえ一番恵まれた生活をしている平壌市民であったとしても、外貨を持って多くの製品を買い求める。ここから見ると、この3年間で広がりつつある商品経済の一端を垣間見たような気がした。

即売会という側面が強くなった一方で、大型機械やインフラ関連などの企業が参加しなくなったと、久しぶりにこの展覧会を訪れたという、環日本海経済研究所(新潟市)調査研究部の三村光弘調査部長は指摘する。核開発やミサイル発射による国際的な経済制裁で、特にインフラ関連企業などはおおっぴらに北朝鮮とのビジネスを公にすることは難しくなった。同時に、「多くの顧客を対象にするわけではないので、このような展覧会に参加しなくてもB2Bで商談を進められる」(三村氏)という側面もあるようだ。

また、このような展覧会以外でも、平壌市民たちの購買力と消費の選択の幅が広がったという指摘もある。展覧会を訪れた別の在日コリアンは、(滞在中は常に同行する)案内員がある日用品を指して「高い。市内の別の百貨店のほうが同じものを安く売っている」と指摘したことがあったという。

北朝鮮の消費の場といえば、「チャンマダン」と呼ばれるヤミ市場が代表格だが、そんな状況も変わりつつある。2年前に中国企業との合弁で開店した「光復地区商業中心」をはじめ、スーパーのような商業施設が徐々に開店している。既存の国営百貨店にもモノがずいぶんと増えてきた。ここでも、商品経済の広がりがわかるような指摘だった。

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