北朝鮮に消費ブームがやって来た 副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで

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今回の訪朝ではほかにも、北朝鮮の工場と農場を訪れることができた。その一つ、千里馬タイル工場を訪問した。

ここは平壌市内から車で1時間ほど、南浦市にある北朝鮮を代表する模範工場の一つだ。2009年に設立され、今年8月までは「大同江タイル工場」と呼ばれていた。名称が変更されたのは、かつて北朝鮮のナンバー2とされた権力者で昨年12月に処刑された張成沢氏がこの工場に強い影響力を持っていたためという説も一時期流れた。

敷地面積は100万平方メートル、担当者によれば現在は拡張工事を進めており、2015年には年間600万平方キロメートルのタイルが生産可能になるという。
金正恩時代になって平壌をはじめ、全国にさまざまな娯楽や教育、住宅などの施設が建設されているが、いずれもこの工場で生産されたタイルが使われているという。

また、原材料はすべて国産でまかなっており、「金正恩元帥が『すべて国産であることがとてもいい。原料を国産でまかなっていることこそ実利があり、世界の景気変動にもびくともしない』と言ってほめられた」と工場を案内してくれた担当者は胸を張った。

清潔な工場、海外での技術研修も

工場内は非常に清潔であり、日本の工場とそれほど遜色はない。ISOなど国際的な認証も得ているという。自慢は縦2.5メートル、幅3.5メートルの人造タイル。これほど大型のものを生産できる工場はここだけ、との説明を受けた。

技術はイタリアをはじめ海外でも研修を受けているという。「イタリアなどから輸出してほしいと言われるが、この工場は国の生産計画を受けて生産する工場。今後、生産余剰が生じ、またニーズがあれば輸出することも考えられる」との担当者の説明だ。

農場にも足を運んだ。平壌から南に来るまで1時間、沙里院市にある米谷協同農場の訪問が許された。この農場は故・金日成主席と金正日総書記がしばしば訪れた、模範的な農場だ。

耕作面積は水田だけで750ヘクタール、野菜などの畑を含めると860ヘクタールほどになるという。他にも果樹園もあり、農場員は合計2000人。北朝鮮国内の農場でも、米谷協同農場は大規模なほうだ。

農場の担当者によれば、この農場での穀物生産目標は1ヘクタール当たり11トン。全国的には同10トンの生産目標を掲げるところが多いが、ここは模範的な農場でもあり、また実際に収穫量は高いため、少し高めの目標を掲げているとのこと。実際に、目標はクリアできそうだと担当者は自慢する。

今年、北朝鮮は田植えの時期に天候不順で水不足に陥った。そのため、この数年間増加を続けてきた穀物生産量が落ち込むのではないかと心配されている。その点を聞いてみると、「わが農場には灌漑施設が整っており、水不足の影響はなかった」と説明した。

この点について、朝鮮社会科学院経済研究所農業経営室の金光男(キム・グァンナム)室長は、水不足による悪影響に触れながらも、「国家が水を優先的に農場に回し、また電気供給も優先してポンプによる水のくみ上げを可能にするなど水の確保に全力を尽くした結果、全国的な目標である1ヘクタール当たり10トンの穀物生産量は達成できそうだ」と述べた。

実際に金室長は、記者とのインタビューの前にも地方の農場を訪れたところ、「作況はよいほうだった」と付け加えた。

農業の話をもう少し続けたい。それは、北朝鮮の農業生産において徐々に変化が生じているためだ。それは、農民の生産意欲を刺激して生産量を増やすための方策が実施されているためである。

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