高品質だけを強調して売れる時代は終わった--ハリス・ダイアモンド ウェーバー・シャンドウィックCEO
国内需要が縮小する中、多くの日本企業にとって海外事業の拡大が急務になっている。海外の消費者を引きつける魅力あるブランドに成長するためには何が必要なのか。世界3位の広告会社インター・パブリック・グループ(IPG)の傘下で、企業PRやコンサルティングを手掛けるウェーバー・シャンドウィックのCEO、ハリス・ダイアモンド氏(=写真=)に話を聞いた。
--日本企業と海外企業でブランド戦略に大きな差はありますか。
ブランド戦略を考える時に、まずどこに対して影響力を行使しようとしているのかを考える必要がある。消費者なのか、投資家なのか、あるいは業界を取り巻く政府や政策なのか。この3つが世界各国で共通のターゲットだ。
この3つに対して、どれくらい積極的に活動しているかは国によって差がある。韓国や中国の企業は海外の消費者に買ってもらうため、積極的にブランドを強化している。日本企業ではソニーが代名詞のように言われてきたが、まだまだ積極性が必要だ。
--ブランド戦略を練る際に、重要なことは何でしょうか。
真っ先に考えなければならないのは、そのブランドがどういった意味を持つのか。つまり、「そのブランドは何なのか?」の「何?」の部分を明確化させなければならない。
最近、特に消費者が重要視するのは、そこにイノベーションがあるのかどうか、今までのものと比べて生活の質を向上させる要因が含まれているのか、あるいは使われている技術が洗練されているか。そういった属性に自分たちのブランドが当てはまって代弁者になれるものであるとすれば、一歩踏み込んで、そのブランドを自分たちのためにどう活用していくか考えていくことになる。
日本は国として品質を重んじるというのは、世界中の誰もが理解している。ただ、ブランドとして品質の高さを訴求したからと言って、それ以上のものではない。質だけならドイツや他の国でも非常に高い。えてして多くの企業は自分たちが何を伝えたいのかに必死だが、一番大事なのは消費者の側から考えることだ。
--日本企業は海外企業と比べて、品質の良さばかりをアピールする傾向がある、と。
若干ある。企業によって例外や差はあるが、傾向として内向きの姿勢をとってきた。極端な話をすれば、島国であるがゆえの強みや弱みだ。どの国でも共通することだが、自国市場が大きければ海外に目を向ける必要がない。ただ、市場がグローバルになったという認識を持ち始めた企業は、海外に目を向けてどういった提案をしていかなければならないのかを当然考え始めている。