DRAM“ジリ安”の不安、厳冬に構えるエルピーダ
暑かった“夏”はあっという間に過ぎ去り、来る“冬”に向けた準備に奔走--。国内唯一のDRAMメーカーであるエルピーダメモリは10月8日、600億円の転換社債発行を発表した。
2009年6月末に改正産業活力再生法の第1号に認定されたエルピーダ。同スキームの一貫で09年8月に日本政策投資銀行へ300億円の優先株を発行したほか、昨年9月以降、公募増資や第三者割当増資などを相次いで実施。さらに、今年度中に台湾証券取引所への預託証券に上場する考えで、約100億円の資金調達を計画している。
株価の希薄化懸念を押してまで精力的に資金調達に励むのには理由がある。12月8日に償還期限を迎える300億円の社債のほか1年内返済予定の借入金など、今期末に約700億円の有利子負債返済が待ち受けているのだ。
そしてもう一つ、より切迫した事情がある。DRAM価格のジリ安だ。
1・5ドル以下へ下落も
リーマンショック後、1ギガビット製品(DDR2)のスポット価格は、一時60センチを割り込んだ。が、各社が赤字に陥ったことでメーカー淘汰と投資計画凍結が進み、供給圧力が低下。一方、新興国を中心にパソコン需要の回復が堅調でDRAM価格は09年に上昇に転じ、今年春先には3ドル超へと大躍進を遂げた。
価格高騰の恩恵を受けてエルピーダの業績もV字回復。09年度第2四半期に、8四半期ぶりに黒字転換すると、今年4~6月には444億円の営業利益をたたき出した。