ウクライナより深刻?「岸田リスク」を総点検する 岸田内閣は短命のほうが日本のためになる?

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岸田氏は、「新しい資本主義」という内容空疎な言葉の使用を止める気配がない。おそらく、口にしてみると、耳障りが良くて、自分が何かを考えたかのような誇らしい気分になるのだろう。できるなら人前で口にするのは我慢してほしいものだが、かつての首相たちも、「改革」とか「美しい国」のような、中身が伴わないけれども気持ちのいい言葉を発することをつねとしていた。これは首相官邸の風土病なのかもしれない。

日本の資本主義の本質とは何か?

しかし、「美しい国」くらいなら国民は陰で嗤っていればよかったが、「新しい資本主義」は、しばしば株価や経済にとってのリスク要因になるので厄介だ。

先の金融所得課税の見直しもその1つだが、岸田首相は、どうやら株主レベルでの利益追求を抑制することが、資本主義の見直しになると思い込んでいるらしい。小さなレベルでは、「自己株買いの規制の検討」、「業績の四半期開示の見直し」、といった株式投資家に不利益ないし迷惑な施策の可能性を口走るし、おおもとで「新自由主義の見直し」が必要だと思っているらしいことが厄介だ。

そもそも日本の経済が新自由主義的だと考えることは事実誤認だ。政・官、および大企業正社員階層から上の企業人たちは(日本の「上層部」と呼ぶことにしよう)、メンバーシップが固定的な「資本主義の仮面を被った縁故主義」とでも呼ぶのがふさわしい形で社会および経済を運営している。

日本の資本主義は独裁国家・権威主義国家と呼ばれる国々が民主主義を名乗るために行っている選挙のごとき一種の仮面にすぎない(ウラジーミル・プーチン氏も選挙で選ばれた大統領だ)。2世、3世議員がうようよいる自民党政権は(野党にもいるが)、経団連ばかりか、連合にも守られて(野党を分断してくれる自民党の最大の応援勢力だ)、固定的な支配構造が当面安泰だ。社会・経済が長年停滞するのも無理はない。

もっとも、正社員メンバーシップから外れた非正規労働者に対しては、企業をはじめとする上層部の行動は、極めてドライに古典的資本主義を適用している。労働力は、極めて安価かつ競争的に商品化されている。ここだけを見ると、今時になってマルクスを持ち出す人達の気持ちがわからなくはないが、日本全体が資本主義的に運営されていると見るのは間違いだ。

こうした状況に「新しい資本主義」が絡むのでややこしい。日本経済の発展のためには、「普通の資本主義」を社会の上層部に対して徹底すべきだし、株式の投資家がおおむね願っている「成長戦略」はその方向にある。しかし、岸田氏にはこれが「行きすぎた新自由主義」に見えるらしい。

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