ライザップが東芝元社長を経営に迎え入れる理由 辞任劇から1年余りの車谷氏を社外取締役に

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これは、ライザップの業績が一定水準に達した際に1株=165円で100株買えるという予約権を1個=200円で購入するものだ。業績が伸び株価も上昇しているであろう将来において、現状の株価水準に近い165円で株を取得できるメリットがある。

有償ストックオプションを割り当てるのは子会社まで含めたライザップの役員や従業員など約230人となる。その1人に車谷氏も入っており、5000個(100万円分)購入することが決まっている。

予約権の購入には当然リスクもある。2024年3月期から2026年3月期の間にライザップの連結営業利益が300億円に到達していなければ、予約権を株に交換することはできない。利益達成が未達に終われば、予約権購入に投じたお金はふいになる。

この流れには「既視感」も

ライザップの営業利益の過去最高額は2018年3月期の135億円。足元の2022年3月期予想は70億円だ。300億円の達成には、安定期に入ったボディメイク事業の再成長や子会社群のさらなる事業再編などが必須となる。

瀬戸社長は「ライザップ事業で隠し球がある」と300億円達成に自信をみせる一方、「予約権購入はベット(賭け)に近い」とも話す。そのような性質の予約権に100万円を投じる予定の車谷氏は、テレビCMで耳なじみのフレーズどおり、ライザップの成長に「コミット」するわけだ。

しかし、著名経営者を迎え入れた後に株式発行という流れには既視感がある。想起するのは、松本氏の経営参画とほぼ同時に発表した公募増資だ。

松本氏が代表取締役COOに就くという期待感も加わって、2018年6~7月に行った公募増資と追加売り出しでは、約3万人の投資家から355億円を調達した。ところがその半年後には買収戦略の行き詰まりが露呈。株価は大きく下落し、いまや公募増資の売り出し価格の10分の1だ。

はたして「今回は違う」といえるのか。瀬戸社長としては、なんとしても雪辱を晴らしたいところだろう。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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