ライザップが東芝元社長を経営に迎え入れる理由 辞任劇から1年余りの車谷氏を社外取締役に

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瀬戸社長は、東芝時代の車谷氏からも交流を通じて経営のヒントを得ていた。その1つがコスト削減時における経営トップの「心得」だ。

「コスト削減中は売り上げを追わせるようなことは言わない。社内がどちらに集中すればいいかわからなくなるからだ。売り上げとコスト削減の二兎は追えない」

瀬戸社長はそう学んだという。ライザップは2021年3月期に3期ぶりの黒字化を達成した。コロナによる休業の影響もあるが、この間に販管費を238億円削減した。2022年3月期も第3四半期まで黒字が続く。瀬戸社長はこの黒字化に車谷氏の助言が貢献しているとする。

銀行出身でファンド経営にも携わった経験を持つ車谷氏からは、金融機関やマーケットとの付き合い方についても指南を受けているようだ。ライザップの今後の成長戦略について2人で会話する中では、暗号資産やNFT(非代替性トークン)にまで話題が及ぶ。

今回の招聘は「過去とは違う」

ライザップが近年招聘した著名経営者といえば、松本晃氏(元カルビー会長兼CEO)と中井戸信英氏(元SCSK会長兼社長)を思い出す。

松本氏がカルビー会長兼CEOを退くと発表した直後、瀬戸社長は直接口説きに行き、2018年に代表取締役COO(最高執行責任者)としてライザップに迎え入れた。中井戸氏は共通の知人の推薦を受けて、2019年にライザップの社外取締役に就任してもらった。中井戸氏の求めに応じて取締役会議長の座を提供する厚遇ぶりだった。

中井戸信英氏(左写真:吉野純治撮影、2011年)と、松本晃氏(右写真:今井康一撮影、2019年)

ところが、2人とも在任1年で取締役を退任した。松本氏の場合、不振企業買収による拡大戦略を止めたことで自分の役割を果たしたときれいに身を退いたが、中井戸氏は任期満了を前に辞任届けを突きつけた。ライザップの再建策などをめぐって瀬戸社長と衝突したとみられる。

このようなことがあったからか、瀬戸社長は車谷氏との付き合いの長さを含めて「今回は違う」とアピールする。2月15日に発表した役員・従業員向けの有償ストックオプション(募集新株予約権)における車谷氏との取り決めもその1つだ。

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