日本人が直面する「先進国内の地位低下」の深刻さ 円安、低成長…古い経済構造の改革が大きな課題

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図表2において1990年代の半ばに日本の数字がアメリカより大きくなったのは、多分に為替レートの影響であることがわかる。

一方、図表3でも韓国が顕著に成長している。

世界的分業の中で自国を正しく位置づけられるか

図表2でも図表3でも、アメリカと中国が成長していることが印象的だ。

アメリカはIT革命を実現することによって、そして中国は工業化を実現したことによって、高い成長率を実現した。

ところで、韓国や台湾も高い成長率を実現している。これは、米中の成長と深い関係があるに違いない。実際、これらの国は、米中と分業関係を築き、高い成長率を実現しているのだ。

ヨーロッパでは、アイルランドがアメリカのIT産業と関係を築き、高い成長率を実現している。

1人当たりGDPで、アイルランドは世界で現在第3位だ。しかし、1980年には、アイルランドの1人当たりGDPは日本の65%でしかなく、世界第20位だった。

日本やヨーロッパの主要国は、そうした分業関係を築けず、古い経済構造のままにとどまっている。

世界経済は分業によって成り立っている。世界経済の変化の中でいかにして他の国々と分業関係を作れるかが、発展の鍵になっている。

日本は島国であることや、言葉の障害があることから、世界経済の変化に対してあまり敏感に対応しなかった。

そして、1990年代に確立された産業構造を維持することが最優先の目標と考えられてきた。それが世界の変化に対応することを妨げてきたのだ。

これをどう改革できるかが、将来に向かっての課題だ。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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