コミュ力に必要なのは「相手に期待しすぎない事」 人と向き合ううえで「間の取り方」はとても大切

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だから、世の中そんなものだと最初から期待しません。ある意味のあきらめがあるのだと思います。そういう諦念が底にあるから、相手に対しても期待しすぎません。期待を外されても、「まぁ、そんなものだ」とか、「よくあることだ」と引いて見ることができるのです。

「余裕」があれば、相手を追い詰めません。だから人が気安く寄ってくるのです。相手に期待しすぎる人は、どうしても重くなってしまいます。そういう人は敬遠されます。恋愛と一緒ですね。好奇心は大いに持つべきですが、過剰な期待をせず、相手との距離感を適度に持つこと。「間の取り方」といってもいいかもしれませんが、人と向き合う上でとても大切なことだと思います。

ミサワホーム創業社長が「疲れたふり」をする訳

ちょっと昔の話になりますが、ミサワホームの創業社長である三澤千代治さんの話をします。私は過去、何度かお目にかかって話をさせてもらっています。ところが会うたびに、三澤さんは疲れてグターッとしているのです。

ある日、思い切って尋ねてみました。「どうして社長はいつも疲れているのですか?」と。そうしたら意外な答えが返ってきました。「疲れているぐらいのほうがいいんですよ」。

どういうことかと思うでしょう? 聞けば、社長である自分があまりに元気でギラギラしていると、周囲が怖気づいてしまうというんですね。そこまでいかずとも、警戒心を持たれてしまう、と。「グターッとしていてごらん、安心してみんな本音で話してくれますから」。

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さすがだと思いました。1代で会社を創業し、繫栄させた三澤さんならではの、人心掌握術であり操縦術です。

ほとんどの人は自分をよく見せたいとか、大きく見せようとします。でも、その結果相手も鎧を着てしまいます。本音、本心が見えなくなるんですね。あえて自分をダメに見せる。隙を見せることで相手の武装を解除させてしまうわけです。コミュニケーションの高等戦術です。

よく書店で、「賢く見せるための話し方」みたいな本があります。しかし、むしろコミュニケーションを上手にとりたいなら、能ある鷹ほど爪を隠すべきです。隙を見せ、ボケる術を身につけるべきでしょう。

田原 総一朗 ジャーナリスト

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たはら そういちろう / Soichiro tahara

1934年滋賀県に生まれる。1960年早稲田大学を卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年東京12チャンネル(現・テレビ東京)に開局とともに入社。1977年フリーに転身。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年戦後の放送ジャーナリスト一人を選ぶ城戸又一賞を受賞。

著書に『伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』(白秋社)『戦後日本政治の総括』(岩波書店)『創価学会』(毎日新聞出版)『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』(講談社)などがある。

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