一方で、パウエル議長を含めたFRBメンバーが想定かつ金融市場が予想しているような大幅な利上げが実際にできるかどうかは不確実性が高い。FRBにとってはインフレ沈静化が、今後経済成長率が急減速したり、それを予見して株式市場が大きく下落すれば、一転利上げ見送りに判断が変わりうる。
株価はどこで下げ止まるのか
筆者は、FRBが1月FOMCにおいて事実上「予告」した、3月FOMCの利上げ開始の判断を覆すハードルはかなり高く、ブラード総裁が考えているとみられる、0.5%の大幅利上げが実現する可能性が高いと予想する。
だが財政政策が引き締め的に作用するなかで、大幅な利上げを始める段階で、早々に金融引き締め方向に傾斜するので、引き締め効果が顕在化して2022年央にかけて経済の停滞が鮮明になりそうだ。この大幅な引き締め政策が政策ミスとなり、FRBへの金融市場の信認がより低下するのではないか。
金融財政政策が双方とも2022年から成長率を押し下げる方向に働き始めているところに、昨年末からオミクロン変異株が蔓延して経済活動を混乱させた。オミクロン株の感染者はすでに急減しているため、対人接触型サービス業への悪影響は1月後半から和らいでいるが、なおも経済全体に影響を及ぼすインパクトを与えていることには変わりない。
さらに、ウクライナ情勢がいよいよ緊迫化、金融市場はかなり動揺している。2014年のクリミア半島へ侵攻した経緯を踏まえれば、米欧とロシアの立場の違いが大きいのだから、この地政学リスクには予断を持たないほうが良いだろう。
2014年時はロシアの軍事行動による緊張が世界経済に及ぼした影響は限定的だったが、当時と現在では、米欧諸国のインフレ状況が大きく異なる。地政学情勢の緊迫化は、FRBなどの政策運営をより困難なものにさせ、2022年の世界経済全体に悪影響をもたらす可能性がある。
以上を踏まえると、今後の経済活動や企業業績の急減速が懸念され、アメリカ株は一段と下落するとみる。筆者は市場の多くの予想とは違って、5月以降のFOMCでは、利上げ継続が困難になると予想している。
そして、同国株が下げ止まるタイミングは、FRBに利上げを躊躇させるほどの、株価下落や景気減速の兆候が散見されるようになったときではないか(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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