改めてFOMC(連邦公開市場委員会)を振り返ると、ジェローム・パウエル議長の記者会見(1月26日)は、市場にはかなりタカ派的と受け止められた。
パウエル議長は、会見で今後利上げを「着実に(Steadily)進める)「機敏(nimble)に金融政策を運営する」などと発言した。これを受けてウォールストリートでは3月以降毎回FOMCで利上げを予想するエコノミストが多くなった。
さらに、2月10日にはセントルイス連銀のブラード総裁が、1月消費者物価が前月同様の高い伸びになったことを受けて、「7月までに1%まで政策金利を引き上げるべき」との考えを示した。実際に、1月のインフレは家賃や外食など、幅広いサービス業に価格上昇の裾野が広がっていることを示している。
インフレ沈静化がFRBの最大の政策目標となる中で、次回3月FOMC(15~16日)における0.5%の利上げや資産売却を含めたバランスシート縮小政策をブラード総裁は考えているとみられる。
同総裁の見解は、これまでのFOMCメンバーとはかなり異なり、コンセンサスを得ているとは言えないかもしれない。だが、タカ派の筆頭格として存在感が高まる同氏の意見が尊重され、当面「より強い引き締め政策」が採用される方向で議論が集約するだろう。インフレ抑制に失敗してしまったこともあり、パウエル議長率いる執行部の意見が影響力は小さくなっているとみられる。
もはや過去の「緩やかな利上げ」は参考にならない
また、インフレ沈静化が最重要課題となっているので、インフレが低位で安定していた2000年代以降の局面で、緩やか(gradual)に利上げをしてきた過去の経験則はほとんど参考にならない。
今後の利上げ判断は、毎回のFOMCのたびに、利上げの是非、利上げ幅を含めて柔軟に判断されるとみられる。場合によっては緊急会合による利上げ開始があっても不思議ではないだろう。
FRBは、大幅な利上げに加えて、バランスシート縮小政策も、インフレ沈静化の手段として最大限利用するとみられる。2018年時の前回のバランスシート縮小と比べるとかなり急ピッチに進めると見られ、長期金利を上昇させる手段として使われることになりそうだ。この政策対応によって、金融市場の流動性が縮小するので、株式などのリスク資産の価格に大きく影響するだろう。
筆者が想定しているFRBの対応は、景気失速のリスクをとることと引き換えに金融引き締めを行うことを意味する。政策転換によるアメリカ経済の停滞と混乱が、株式市場や社債市場では依然十分に認識されておらず、今後折り込み余地がまだあると筆者は考えている。
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