「反日一辺倒」を変え始めた韓国メディアの葛藤 慰安婦支援団体のスキャンダルで“聖域"が崩れた

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──逆に日本では、反韓・嫌韓的な報道が増えています。

東京駐在の韓国メディアの記者たちの間では、日本メディアによるむやみやたらな反韓・嫌韓的な報道を基に「日本はこう考えている」といちいち報道するのはやめようといった合意があります。そういった報道に意味を見いだせないからです。

私は韓国人記者として、これまで日本メディアの自由な報道がうらやましかった。じっくり時間をかけて準備し、かつ専門性の高い深掘りした記事があり、そして多様な見方にあふれていた。最近は、とくに多様な見方が失われていると感じることがしばしばです。

国家間の合意は問題の「終わり」ではない

韓国は何十年も反日一辺倒の報道をやってきたが、それで日本が変わったかどうか──。韓国メディアはこのような反省に立つようになったのです。相手を批判するための力の10分の1でも相手を理解するために使うべきではないかと考えます。今の日本メディアは、かつての韓国メディアの姿に近づいているようです。

──2015年の日韓慰安婦合意によって設立された「和解・癒やし財団」の理事も務めました。

『慰安婦運動、聖域から広場へ 韓国最大の支援団体の実像に迫る』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

日韓の歴史問題について、「国家間の合意は万能ではなく、合意は終わりではなく管理の始まりだ」と言いたい。日本は1965年の日韓基本条約で「問題は解決済み」と言いますが、決められたことを土台によい関係をどう管理していくかが重要ではないでしょうか。

元徴用工の問題は日韓基本条約で議論されましたが、慰安婦問題や広島・長崎での韓国人被爆者への医療支援、旧樺太(サハリン)在住韓国人の帰還支援といった問題は当時議論されませんでした。それでも「解決済み」とせず、紆余曲折を経ながらも、顕在化した問題を解決しようと少しずつ日韓が協力してきた歴史がある。これを忘れてはいないでしょうか。条約締結で終わりとするなら、これらはできなかったはずです。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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