世界的な「食品価格高騰」が起こす社会不安の顛末 農業大国の干ばつや悪天候、情勢悪化も要因

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アメリカ国防大学アフリカ戦略研究センターのジョセフ・シーグル氏は、アフリカ大陸では2018年の2倍となる1億600万人が食料不足に直面していると推計。「アフリカはかつてないレベルの飢えに見舞われている」という。

メキシコシティ・フアレス地区の市場で買い物をしていたガブリエラ・ラミレス・ラミレスさん(43)は、食品が高騰したせいで家計が一段と圧迫されるようになったと話す。家政婦として働くラミレスさんの毎月の生活費の半分は食費に消えていく。

メキシコの物価上昇率は昨年12月にやや落ち着いたとはいえ、11月に20年ぶり以上の水準を記録した。「収入が少ないので大打撃。賃上げも雀の涙で、十分に食べられないこともある」とラミレスさんはいう。

アメリカの低所得層にもショックが広がる

家計に占める食費の割合が平均で7分の1というアメリカでは、そこまで深刻な影響は出ていない。

それでも食品価格は急騰しており、家計に占める食費の割合が高い貧困層には大きな負担となっている。アメリカ労働統計局によると、食品価格は昨年12月に前年同期比で6.3%上昇し、中でも肉類、魚、卵の価格は12.5%も高くなった。

アイオワ州北部のトウモロコシ・大豆農家で全米トウモロコシ生産者協会の幹部を務めるクリス・エジントン氏は、肥料や農作物保険、農薬の値上がりで農家も苦労していると話す。

コスト高に伴って売値も上昇しているため、以前と同様の利益は確保できているが、価格の「大変動」によって経営のリスクは高まったという。「利益は基本的に数年前と変わらないのに、扱う金額が増え、大きなリスクを抱えることになった」というわけだ。

(執筆:Ana Swanson記者)
(C)2022 The New York Times Company

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