世界的な「食品価格高騰」が起こす社会不安の顛末 農業大国の干ばつや悪天候、情勢悪化も要因
そして2020年の初めに新型コロナウイルスのパンデミックが広がると、世界の食品需要環境は激変した。飲食店や食肉加工工場は休業に追い込まれ、アメリカでは販売先を失って牛乳や家畜の処分を余儀なくされる酪農・畜産農家も出た。
それから2年が経過した今、世界の食品需要は高い水準を保っている。だが、燃料費や輸送費の高騰、トラック運転手やコンテナ不足などのサプライチェーン問題によって食品価格は上がり続けているとIMFのエコノミスト、クリスチャン・ボグマンス氏は指摘する。
ブラジル、アルゼンチン、アメリカ、ロシア、ウクライナといった農業大国の干ばつや悪天候も状況の悪化に拍車をかけている。
トウモロコシと小麦の価格は8割上昇
IMFの統計によると、世界全体の食品価格は昨年12月、年率換算の平均で6.85%上昇し、2014年の統計開始以降で最大の上昇率となった。2020年4月〜2021年12月の期間に大豆の価格は52%、トウモロコシと小麦の価格は80%上昇。コーヒーも、主にブラジルの干ばつと冷害の影響から70%値上がった。
現在、食品価格は安定に向かっているように見えるが、小麦とトウモロコシの一大産地であるウクライナ情勢の悪化や、さらなる悪天候に見舞われれば、食品価格安定の見通しは崩れる可能性があるとボグマンス氏は話す。
もちろん、食品価格高騰の影響は地域によって異なる。コメの生産量が多いアジアは今のところ大きな影響を免れているが、食品の輸入依存度が高いアフリカ、中東、中南米の一部はかなり苦しい状況となっている。
ロシア、ブラジル、トルコ、アルゼンチンといった国々も、自国通貨が米ドルに対して下落したため状況は厳しい。食品の国際貿易で決済に用いられるのは基本的にドルだ。
アフリカでは、悪天候や新型コロナによる活動制限、コンゴ、エチオピア、ナイジェリア、南スーダン、スーダンの紛争によって輸送網が混乱したり、寸断したりしたことから食品価格が高騰している。