「奨学金570万円」借りた男性が語る「超逆転人生」 貧困DV家庭出身者が大学院まで進んだ結果

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木村さんは4人兄弟の長男だ。母は歳の離れた弟たちの子育てもあって、正社員にはなっていなかった。そのため、木村さんは高校生になると、通っていた公立高校の授業料を自身のアルバイト代から捻出するようになったという。

「僕が住んでいた県では当時、公立高校の授業料はひと月に1万5000円あれば足りたんです。それと教科書代と交通費。教科書代は年に1回、1~2万円程度用意しておけばよく、交通費も半年で3万円くらいでした。バイト代は月々7万〜8万円ぐらいですね。1〜2年生の頃は大晦日もバイトしていました」

そんなバイト漬けの木村さんが、本格的に勉強を始めたのは2年生の終わりから。1年生の頃から大学進学は決意していたが、進学校出身ではない。むしろ、母校の偏差値は40台だったという。

「ある時、全国模試を受けたら、物理の全国偏差値が37だったのに、うちの学校の生徒のなかでの偏差値は73だったことがあって。その結果を見て、『このままじゃ自分の人生はダメになる。いい大学に行きたい!』と思うようになり、勉強熱に火がつきました」  

高校の推薦入試で受けられる学校のなかで、一番難易度の高い大学が日本大学だったこともあり、「絶対、日大よりも上に行く! できれば、MARCH以上!」と決意した木村さん。センター試験で失敗したことで第一志望の国立大学には振られてしまうが、予備校などに通うこともなく、  最終的に某有名私大に現役合格を果たした。

「国立には落ちましたけど、受験したMARCHなどの大学はほぼすべて合格。高校ではスーパースターのような扱いで、母も喜んでくれましたしね」

私立理系の授業料が重く乗りかかり…

高校ではスーパースターになった木村さんだが、肝心の授業料を、誰かが自分の代わりに出してくれるわけではない。すぐに大学の入学金30万円が必要になり、理系ということもあって、授業料も毎年120万円かかった。
そして、木村さんは奨学金(第一種)を借りることを決意。毎月5万円振り込まれるようになったが、余裕はなかったという。

「年間120万円の授業料なので、ひと月あたり10万円はかかる計算ですよね。そうなると、奨学金が毎月5万円入ってきても、『毎月マイナス5万円からのスタート』でした。正直、今なら『もっと借りておけばよかった』って思いますけど、数百万円なんて高校生にしたら大金じゃないですか。怖さしかないし、当時は『5万じゃ、足りないよ〜』という気持ちでした」

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