自宅の一室を「外国人に貸す」ある家族が学んだ事 トランスジェンダーの賃借人との生活も

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このご家庭のトイレに貼られた世界地図。これまで一緒に暮らしたことのある人々の出身地と名前が書き込まれている(写真:筆者撮影)

留学生ジェイさんの話で印象的だったのは、彼がどこまでトランスジェンダーをオープンにしたいのか、お子さんにどのタイミングでどう伝えればいい形で理解されるのか、それらをかなり慎重に判断し、ジェイさんに丁寧に確認しながらカミングアウトを進めていったことです。その背景にあるのは、センシティブなことはオープンにするのがベストとは限らないと理解しているからだと私は感じました。

さらに、シェアメイトとの過去のトラブル話についても、「あちらだけが悪かったわけじゃない」「これはあくまで私たち側からの見方だけど」など、一方的な悪口にならないように気を付けながら話しているのが伝わりました。

今回のつかれないヒント

「多様性」は、多様な人とただ共存すればOKという単純な話ではなく、そのコミュニケーションに優しさと柔軟性を持ってこそ成り立つもの。このご家族は、シェアという形を通して、ときには楽しい時間を過ごし、ときには反省し、ときには痛みを伴いながら「多様性」を多面的に学んでいっているのだな、と私は感じたのです。

『ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

ところで、子育てしていると、独身時代よりも多様な人々との交流がどうしても増えます。保育園や学校、子どもの友だち、ママ友パパ友。つきあいが面倒なときもあるし、どうしても合わない人に会うこともあるし、トラブルに巻き込まれることもあります。ですが、一歩踏み出して向き合ってみると、世界が広がったり知見が広がったりお互い助け合えることもある。「多様性」といい距離感でつきあえるかは、シェア生活をしていなくてもすべての家族にとってもきっと大事なことです。私はそのつきあい方のヒントもこのご家族から感じたのでした。

というわけで、今回のつかれないヒントは…

子育てをめぐるいろんな人間関係につかれた

多様な人々とつきあうと、合わない人もいるし、
トラブルがときに起こるのも当たり前。
大事なのは、すべてをシャットアウトすることではなく、
自分に合う人を選び、自分に合う距離感でつきあうこと。
それで広がる世界もきっとあるはず。

さて、次回は、このふたりの夫婦関係、家事育児分担を紹介します。他人とのシェア生活を長年続けながらやってきた夫婦生活とは?

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。
ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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