日本女子バスケが100以上もの陣形を用意した訳 五輪銀メダルに導いた男が手段を多様化した意味
確かに私がヘッドコーチに就任した2017年頃は、オフェンスのほとんどを私がコントロールしていました。「これをやって!」と。でも徐々に選手たちの状況判断がよくなってきたので、少しずつコントロール権を委ねていきました。
また試合の状況に応じて、私がやりたいと思うフォーメーションを指示しても、それがうまくいかないときもあります。
しかしバスケットボールのオフェンスは24秒以内にシュートを、少なくともリングに当てなければいけません。フォーメーションがうまくいかなくても、時間は過ぎていきます。次に何をするかは、選手たちがその場で、コートの状況を見ながら、判断し、実行しなければいけないのです。数ある手持ちのカードの中で何を選択するのがよいのか。その判断力は間違いなく4年前に比べるとよくなっていました。
たくさんカードを用意しながら臨機応変に判断
選択の判断だけでなく、動きの判断もよくなってきました。私たちはチームルールと呼ばれる、「ディフェンスがこのように動いたら、こう動きましょう」といったチーム独自のルールを決めています。コールしたフォーメーションに対して、ディフェンスが先手を取ろうとしたり、もしくは一瞬でも気を緩めたときに、それを見逃さず、チームルールに沿った、フォーメーションとは異なる動きを全員で連動させる。そうすることで得点のチャンスを増やしていったのです。
オリンピックの決勝戦が終わって、女子アメリカ代表のスーパースター、いずれも個人としてオリンピック5連覇を達成したスー・バードと、ダイアナ・トーラジと、別々に話をしました。そのとき彼女たちはそれぞれこう言ってくれました。
「日本はセットプレーよりも、フォーメーションの中でディフェンスの動きを読んで、次の動きを決めるからディフェンスがすごく難しかったです」
手持ちのカードをたくさん用意することは、刻一刻と変わる状況に対応する上で必要なことです。しかしすべてがそのカードのとおりになることもありません。たくさんのカードを用意しながら、状況に応じて臨機応変に正しい判断をしていく。そうするとよりよい結果が得られるでしょう。
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