日本女子バスケが100以上もの陣形を用意した訳 五輪銀メダルに導いた男が手段を多様化した意味

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私は東京2020オリンピックで、オフェンスであれば100個以上のフォーメーションを用意しました。それを司令塔とも言うべきポイントガードが「このオフェンスでは、このフォーメーションをやるよ!」とみんなに知らせて、オフェンスを始めます。

私がベンチからポイントガードに「このフォーメーションをやりましょう」と伝えることもあれば、ポイントガード自身が試合の状況に応じて判断することもあります。

ですから、ポイントガードはそれぞれのフォーメーションの狙いがどこにあって、誰がどのように動くかまでしっかりと頭に入れておかなければいけません。

もちろん他のポジションの選手たちも、自分がどこに立って、どのように動くのかを覚えなければいけませんし、全員がそれを素早く、的確に始めなければいけないのです。

フォーメーション数が少ないと不利

各国がスカウティングの目を光らせている中、チームの持つフォーメーション数が少ないと、当然その動きが相手に知られてしまいます。東京2020オリンピックは、予選グループが3日に1回、決勝トーナメントも2日に1回のペースで試合がおこなわれました。動きが知られてしまえば、その間に相手も対策を練ってきます。

予選グループの初戦はフランスと対戦しました。3日後の試合はアメリカと対戦することが決まっています。そのときもフランス戦で使った戦術とは異なるフォーメーションをいくつも使いました。

そうすると相手も――この例でいえばアメリカも――「え?」と思うわけです。スカウティングしたフォーメーションとは違っていると。フォーメーションをたくさん用意すれば、相手を混乱させ、自分たちが優位に立つことができるのです。

手持ちのカードはたくさん用意しておく。

バスケットボールは常に状況判断が求められるスポーツです。たくさんのフォーメーションを用意して、「今日の試合では主にこのフォーメーションを使っていこう」と話していても、本当にそれが効くかどうかは、試合が始まってみないとわかりません。

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