「企業倒産の激減」をポジティブに見る人の勘違い 2021年の倒産件数「過去3番目」の低水準だが…
コロナの影響が長引き、多くの企業が苦境に立たされています。ところが、日本ではいま、倒産する企業が激減しています。2021年の倒産件数は、前年比23.0%減の6015件でした(帝国データバンク)。1966年に次いで過去3番目に少ない、歴史的な超低水準です。
これは、コロナで経営が苦しくなった企業に対して政府が強力に支援をした結果です。一般に、倒産件数が減ったのは良いことで、政府のコロナ対策の成果だと言われますが、本当にそうでしょうか。今回は、「倒産激減」という一見素晴らしい出来事の深刻な問題点について考えてみましょう。
なぜ倒産が減っているのか?
まず「倒産激減」の経緯を確認しましょう。コロナ感染拡大が始まった2020年春から、政府は中小企業の倒産を阻止するために、さまざまな支援施策を導入しました。
中でも「倒産激減」に最も寄与したのが、2020年3月に始まった“ゼロゼロ融資”です。ゼロゼロ融資とは、コロナの影響で売上高が減った企業に、実質無利息・無担保で融資する仕組みです(最初は日本政策金融公庫、5月からは民間金融機関も取り扱いを開始。民間金融機関は2021年3月末で取り扱いを終了)。
政府は全国の金融機関に対して、企業からのゼロゼロ融資の申し込みに実質無審査で迅速に応じるよう、強力に指導しました。その結果、経済産業省によると全国の金融機関で約40兆円のゼロゼロ融資が実行されました。こうして中小企業の資金繰りは、劇的に改善されたのです。
その恩恵を受けた近畿地方の部品メーカーN社(従業員30名)の経営者は、次のように語ります。
「この10年ほど赤字続きでしたし、後継者も不在なので、コロナが広がった2年前、倒産しないうちに廃業しようと検討しました。しかし、検討しているうちに、2000万円のゼロゼロ融資を受けられたし、持続化給付金や雇用調整助成金が出たので、取りあえず事業を続けて様子を見ることにしました。といっても、事業そのものが上向いたわけではないので、コロナが収束したら(廃業を)真剣に考える必要があります」
N社のようないつ倒産してもおかしくなかった倒産予備軍がゼロゼロ融資などの支援で延命したというのが、「倒産激減」の一因でしょう。コロナ禍で倒産が増えるどころか、逆に激減したというのは、国の支援が「やりすぎ」だったことを意味します。
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