他方、寄附を受けた自治体は、寄附者に謝礼品として5000円分の地元の特産品を贈ったり、その送料や謝礼品を贈るなどの事務作業のために雇った事務パートへのバイト代で1000円を払ったりしたとする。すると、寄附を受けた自治体は、残りの4000円を収入として得ることができる。
ふるさと納税をした人は、2000円の負担で、5000円の価値のある謝礼品をもらえる、ということなら「お買い得」ということで、気に入る特産品がもらえるならふるさと納税をしてもよいと思う人が増えているという。ふるさと納税をした人も「お買い得」、寄附を受けた自治体も収入増、地元の特産品生産者も地元の雇用者も所得増、といいことずくめのように見える。
結局はゼロサムゲームの世界
しかし、1万円のふるさと納税で、国は所得税収が1600円減り、居住地の自治体は住民税が6400円減る。結局はゼロサムゲームで、得する側があれば損する側がある。
この構造を踏まえれば、ふるさと納税をした人が「お買い得」と思う特産品を謝礼で出せば、ふるさと納税による寄附が増えると期待する自治体が出てきて不思議ではない。事実、そうした自治体はどんどん増えており、謝礼品もどんどん豪華になっている。
これまで、謝礼品は寄附額の3~5割という暗黙の了解があるとされるが、最近では8割返しの謝礼品もあったという。寄附を受ける自治体は、ふるさと納税がなければ寄附はゼロなので、少しでも手元に残れば収入増となるから、ついつい謝礼品に力が入る。特に、人口の少ない過疎部の自治体は、ふるさと納税に熱心で、合計して億円単位の寄附を集めたところも続出している。
確かに、謝礼品として地元の特産品を贈れば、地場産業の振興にもなるし、地元のPRにもなる。さらに、ふるさと納税に関わる事務などで地元の雇用を促進することにもなる。
しかし、謝礼品合戦を見ると、何か本末転倒と思う人もいるかもしれない。
また、ふるさと納税をする人が住む自治体は、住民税収が大きく減るので、危機感を募らせている。特に、大都市の自治体は、ふるさと納税をする住民は多いが、ふるさと納税をしてくれる人は少ないので、今後ふるさと納税が拡大するともっと税収が減るとの懸念が出ている。居住地の自治体からは行政サービスを通じて便益を得ているのに、ふるさと納税によって居住地の自治体への税負担を免れている、というのでは応益負担の原則に反するという批判もある。
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