謝礼品合戦の「ふるさと納税」をどうする? 地方創生の「目玉政策」の問題点と解決策

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地方自治体は、そもそも存在が取り消されることはない。しかし、地方自治体が得た寄附金が、露骨に特定の者の利益を実現してしまうような形で用いられたならば、どうだろうか。ある個人からの営利法人への資金提供は、寄附とはみなされず、出資や利益供与などとみなされ税制上の恩典はない。寄附税制としての整合性に鑑みれば、非営利法人が得た寄附金が不特定多数の者の利益の実現を積極的に目指すべく用いられるならば、地方自治体もそうであるべきだ。

自治体と非営利法人寄附税制での整合性担保を

つまり、ふるさと納税で得た寄附金を、地元経済活性化に用いるのはよいが、露骨に特定の者の利益を実現してしまうような形で使われるようでは、その寄附金は、単に地方自治体を右から左に通り抜けるだけで、特定の業者の利益を増やすだけのものに成り下がる。

寄附をした人が、個人的に、特産品を生産する業者と私的な取引をする時には税制上の恩典はない(所得税や住民税の控除はない)が、ふるさと納税制度を使えば税制上の恩典があるという違いから見ても、税制として整合性に欠く。

そう考えれば、ふるさと納税で得た寄附金は、それを受けた自治体の行政(公益を追求)のために用いるのが基本で、謝礼品は(非営利法人で許されている程度に)特定の者の利益を増やすことがない範囲で認める、というけじめが必要だろう。

その範囲は、単純に寄附金の何割までとかとはいえない。例えば、ある自治体が、ふるさと納税制度で受ける寄附金の5%分の価値しかない謝礼品を贈るとしても、多くの寄附者へのすべての謝礼品を1社の特定の業者にだけ発注するとなれば、当該自治体はその特定の業者と癒着していると見られても反論できないだろう。

それを避けるには、ふるさと納税に対して謝礼品を贈るとしても、特定の業者ばかりでなく、地元の多くの業者に薄く広く発注できるような形で謝礼品を用意するなどの工夫が要るだろう。

このように、ふるさと納税を契機に起きた地元経済活性化など、副次的な効果が出始めているわけだから、頭ごなしに豪華な謝礼品を禁止するというより、個人の自発的な寄附を尊重しつつ、自治体と非営利法人にある寄附税制での整合性を担保する形で、許される謝礼品の範囲を位置づけるのよいだろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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