区ごとの未婚者の所得別人口の統計はないため、2020年総務省「市町村税課税状況等の調」より、未既婚全体の23区の平均所得と生涯未婚率との相関をみることにします。それによると、男性の場合は、所得の高い区ほど未婚率が低くなり、その相関係数は▲0.6381と、強い負の相関があるといえます。女性のほうは、相関係数こそ0.2096とはいえ、所得の高い区ほど未婚率が高くなるという弱いながら正の相関がみられます。
家賃の高い区の女性の生涯未婚率が男性より高いのもその表れです。ちなみに、LIFULL HOME'Sによるワンルームなどの家賃相場は渋谷区3位、北区16位(2月7日時点)です。一人暮らしの場合は治安の良さなども考慮する必要もありますが、渋谷区などは、職場への通勤の利便性なども考慮し、バリバリ仕事で活躍する女性がそのまま生涯未婚者となったという可能性は否めません。逆にいえば、渋谷区は一人で生きる未婚女性にとって、住環境含め住みやすい街であるということかもしれません。
北区の未婚男性の場合も、自分の所得を鑑み、物価や家賃の安い北区を選択したということもいえます。不思議なのは、女性の2位も北区である点です。しかも、2010年まではトップ5圏外だったのに、急に2位になりました。
高齢化率も高い
北区は、お花見で有名な飛鳥山公園があり、大学も多く、交通の利便性も高く、その割に家賃などは安いため人口も増加中の区です。ただし、一方で高齢化率も高く、23区中2位。これは、一度北区に住んだ住人はなかなか他の区に引っ越さないという点もあるのでしょう。20年以上居住率は21.3%で23区中3位です。
20年間の北区の年齢別人口構成を比較してみると、元々20年前にいたボリューム層の25~34歳が20年を経てそのまま45~54歳とスライドしています。もちろん、20年間一人も区外へ移動しなかったわけではないでしょうが、年齢別のボリュームはそのまま維持されており、北区の生涯未婚率が高いのは、未婚者が他の区から移動したというより、元々いた人たちが未婚のまま年を重ねたとも考えられます。
さらに、北区の赤羽界隈は、葛飾区立石と並んで、安く美味しい酒とツマミが楽しめる「せんべろ(千円でべろべろに酔える、という意味)」の街としても有名で、昼間から酒を飲むおじさんや女性客がソロ酒を楽しむ場として、コロナ禍前はちょっとしたブームも作ったところです。
繰り返しますが、どこの区だったとしても、東京の23区の婚姻率は高いわけで、北区に住んだからといって結婚ができないとは言えません。ましてや、北区から出れば結婚できるという保証もありません。結婚しようと、独身のままであろうと、何十年も住み続けたいと思うような居心地のいい場所があるなら、それもまたひとつの幸せなのだと思います。
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