勃興インドネシアで日本車「激戦」火ぶた

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独自エコカー政策で市場「激変」の予兆も

人口の3割が14歳以下のインドネシア。新規労働力を吸収し失業率を下げようと、ユドヨノ政権はさらなる経済成長を目指す。インフラ整備に加え、自動車産業育成にも力が入る。年内にも「グリーンカー政策」が発表されそうだ。

その子細は不明だが、排気量や燃費、部品現地調達比率の基準を満たした自動車の付加価値税(10%)、奢侈(しゃし)税(排気量1・5リットル以下のMPVで10%)等を減免するもよう。中心価格帯を現在の税込み140万円前後から70万~80万円近辺に下げ、購入層を拡大したい思惑が透けて映る。

同じASEANでは、エコカー政策でタイが有名だが、中身は全然違う。タイは1000人あたりの自動車保有台数が140台に達し、法人税や対輸出利益課税の減免による輸出振興を指向した。インドネシアはまだ1000人に30台で、しかも人口2億4000万人。エコカー政策はそのまま国内需要喚起策でいい。効果次第では100万台以上の地平線も見えてくる。

エコカー政策はMPV人気に裏打ちされたトヨタ優位の構造にも変調を迫るはず。少なくとも低燃費の小型車がクローズアップされるのは間違いない。11月から日産は新型「マーチ」を現地生産する。「日本車が9割を占める市場なら、日産が日本と同じ13%のシェアをとって当然だ」(木村氏)。

アジア通貨危機やリーマン禍をくぐり抜け、あらためて注目されるASEANの成長力。舞台を日本から南国に移し、日本勢同士の激しい陣取り合戦が始まった。

■トヨタ自動車の業績予想、会社概要はこちら

(週刊東洋経済2010年10月2日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

photo:aenertia Creative Commons BY-SA

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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