スクープ!女子医大が小児治療「最後の砦」解体へ 再発防止誓ったのに、わずか半年で撤退方針
子供が小児科で治療を受けるのと同様に、集中治療も子供専用が必要だという。小児ICUで治療を受けた小児患者は、成人用のICUで治療された小児患者と比べて、死亡率が3分の1だった、という報告もある。ただし、国内に小児ICU専門医は少ない。
涙を拭いながら見つめるスタッフたちに向かって、田邉院長は小児ICUを立ち上げた経緯をたどるように語った。
「4年前から小児ICUの責任者を探して、カナダの大学に在籍していたA氏が適任者だと思い、何度も東京女子医大に来てくれるように説得しました。そしてA氏の人脈で、アメリカ、オーストラリア、そして日本から合計7人の専門医が集まり、専属の看護師を徹底的にトレーニングしてもらいました。そして昨年7月、小児ICUは8床体制で、すばらしいチームが立ち上がったわけです」
精鋭揃いの東京女子医大・小児ICUチームは、発足直後から高い評価を受けていた。院内で手術を受けた小児患者の管理だけでなく、全国各地から重症の小児が次々と搬送されたのである。新型コロナ第5波の時は、都内各地から感染した重症の小児を受け入れ、全員が元気に退院した。
まさに、子供の命を守る「最後の砦」となっていたのである。
安全対策として約束した「小児ICU」
この会議でA特任教授は、小児ICUに対してチーム全員が特別な思いを抱いていたことを吐露している。
「プロポフォール事件があった東京女子医大で、小児ICUを成功させることに大きな意義がある。そう考えて、ドクターもナースも集まってくれました。しかし、経営陣は小児ICUを必要なものと見なさなかった。言葉もありません」
プロポフォール事件が起きたのは、2014年2月。
耳鼻咽喉科の医師が、当時2歳の男児に良性リンパ管腫の手術を実施した。「簡単な手術」だと両親は聞いていたという。手術後、男児はICU(集中治療室)で人工呼吸器を装着したまま、鎮静薬・プロポフォールを投与される。手術の翌日には、人工呼吸器をはずす予定だったが延期された。男児に浮腫が出るなど、様子がおかしいと感じた両親は、何度も担当医に懸念を伝えたが、聞き入れられなかった。70時間にわたる投与の結果、男児は死亡した。
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