スクープ!女子医大が小児治療「最後の砦」解体へ  再発防止誓ったのに、わずか半年で撤退方針

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実は以前から、小児ICUの存続が危うい、という情報を私は得ていた。そこで東京女子医大に対し、東洋経済編集部から1月25日付で2つの質問を送付した(※要約して記載)。

<質問1>
中心メンバーの退職で、小児ICUは事実上の解体となる見込みか?
<質問2>
プロポフォール事件の反省から小児ICUは開設された。事実上の解体は、約束の反故(ほご)ではないか。社会的責任についても見解をお尋ねしたい。

東京女子医大から2月1日に届いた回答を、抜粋して転載する。

<回答>
小児の集中治療を担当する医師等から退職願が提出された といった事実関係を把握しておらず確たるご回答はいたしかねますが、当院においては以前より小児集中治療体制の整備が図られており、この体制を一貫して維持したいと考えており、小児集中治療室(※筆者注 小児ICU)を事実上解体するといったことは一切考えておりません。

まるで、小児ICUの体制に、何も変わりはないという回答である。

しかし、病院の正式な会議で田邉院長は、小児ICUの存続は難しくなったと、大勢の職員に対して明かしている。それを大学側が知らないはずがない。

現時点で確認している事実関係をお答えしたもの

そこで、2月2日にあらためて編集部から「事態が動いているので、回答はそのままでよいのか」と確認したところ、短い一文が返ってきた。

「2月1日付の回答は現時点で確認している事実関係をお答えしたものですのでご了承ください」

木で鼻をくくったような回答には、誠実さのかけらも感じられない。

事実を平気で隠す東京女子医大の体質は、幼い命を奪った8年前の事件当時と、何も変わっていないのではないか。

小児ICUについて「儲からないから、要らない」という判断は、すなわち小児医療の安全は放棄したことを意味する。結局、岩本理事長以下の東京女子医大経営陣は、医療ミスで尊い命を奪ったことについて、何も反省をしていなかったのだ。

【2022年2月25日18時22分追記】2月3日の記事掲載時は、複数の関係者の証言を基に田邉院長の発言内容を再現しました。その後、田邉院長から発言内容の一部が異なる、との指摘を受けたことから、複数の関係者から入手した録音データに基づく発言内容に訂正します。

岩澤 倫彦 ジャーナリスト

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いわさわ・みちひこ / Michihiko Iwasawa

1966年、北海道・札幌生まれ。ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。2016年、関西テレビ「ザ・ドキュメント 岐路に立つ胃がん検診」を監督。2020年4月、『やってはいけない、がん治療』(世界文化社)を刊行。近著に『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。

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