スクープ!女子医大が小児治療「最後の砦」解体へ 再発防止誓ったのに、わずか半年で撤退方針
院内調査で明らかになったのは、投与されたプロポフォールが成人の最大投与量の2.7倍であり、人工呼吸器をつけた小児には使用禁忌の薬だったことだった。重大な医療ミスである。
事故後、東京女子医大に赴任したベテラン医師は、こう証言する。
「各診療科のセクショナリズムが強くて、とても仲が悪い。だから情報共有もない。あの死亡事故は、起こるべくして起きたと思う」
外部の有識者による事故調査委員会は、「責任の所在が不明確」などの問題点を指摘。加えて、ICUに小児集中治療の専門知識をもった医師が、1人しかいなかったことに言及した。
指摘を受けて、東京女子医大は「大学再生計画」を策定。医療事故の再発防止策の1つとして「小児集中治療室(小児ICU)の設立」を掲げたのである。
プロポフォールの過剰投与で、わが子を失った父親はこう明かした。
「昨年2月、民事裁判の和解協議の席が設けられました。その場に東京女子医大の教授が来て、『二度と同じ過ちを犯さない。お子さんの死を無駄にしないために、小児ICUをつくる』と私たちに約束したのです。それをもう解体するとは、口先だけで誠意がまったく感じられません。失望と憤りがこみ上げてきます」
理事長は納得してGOサインを出した
田邉院長は2日の会議で、経営トップの岩本絹子理事長が、小児ICUの設立に同意していたことを明かした。
「もう4年(筆者注:言い間違いで正しくは2年)になります、A特任教授にカナダから来ていただいて、私とICU教授と理事長ですね。経営統括部長とお会いして、いろいろ待遇面のこと色々ありましたので、内諾を得て(A特任教授は日本に)帰ってくるようになったんです」
岩本理事長への批判ともとれる、田邉院長の言葉に参加者は驚いた。
東京女子医大の創立者一族の岩本絹子氏は、同大の出身。同窓会組織の「至誠会」会長でもあり、2019年に理事長となってから、大学の最高権力者として君臨している。その岩本氏を田邉院長が批判するのは、異例中の異例。
さらに田邉院長は、小児ICUを必要ない、と経営陣が決めた理由にも触れた。
「何回もご説明はしたんですけども、あまり収益的にもよくないし、約束どおりすぐに小児ICUならないと。この小児ICUがないと、実際のところ診療が非常にやりづらい。これまでのように成人を診ている先生とか麻酔科の先生にお願いして、というわけにいかない状況だと思っております。これで何か起こりますと、お約束をした厚生労働省に、本当に何をやっているんだ、ということになりかねないのです」
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