「ほめる教育」で自己肯定感は高まらない衝撃事実 子供を叱らない大人が増えたのは「エゴ」ゆえか

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「ほめる教育」の限界とは?(写真:buritora/PIXTA)
1990年代以降、「子どもはほめて育てたほうがいい」と言われてきましたが、自己肯定感という観点からすると、“逆効果”になることをご存知でしょうか? 「ほめる教育」のリスクを、心理学博士の榎本博明氏の新刊『自己肯定感という呪縛』より一部抜粋・再構成してお届けします。

私は、ほめて育てるということが言われ始めた1990年代以降、若者の自己肯定感が高まるどころか、むしろ低下していることを指摘してきました。

たとえば、日本青少年研究所が行っている高校生の意識調査(日本・アメリカ・中国・韓国の比較調査)によれば、「自分はダメな人間だ」という項目が「よくあてはまる」と答えた日本の高校生は、「ほめて育てる」ことがあまり言われていなかった1980年には12.9%でしたが、「ほめて育てる」ことが徹底して行われるようになって久しい2014年には25.5%と2倍になっています。

しかも、「まあそう思う」も含めて、「自分をダメな人間だと思う」という日本の高校生は、2014年には72.5%となっており、7割以上が「自分をダメな人間だと思う」と答えています。

これが自己肯定感を表す項目だとするなら、ほめて育てることを徹底的にやったところで、自己肯定感はまったく高まっておらず、むしろ大きく低下していると言わざるを得ないでしょう。

また、国立青少年教育振興機構が2017年に実施した高校生の意識調査(日本・アメリカ・中国・韓国の比較調査)では、日本の高校生で「私は価値のある人間だと思う」を肯定する者は44.9%、「私はいまの自分に満足している」を肯定する者も41.5%にすぎず、過半数が否定しており、報告書では日本の高校生は自己肯定感が低いとしています。

この調査では、日常的な心情についての質問もしていますが、日本の高校生の結果をみると、「落ち込む」という者は54.8%、「ものごとに集中できない」という者は45.6%、「なんとなくいらいらする」という者は45.4%というように、ほぼ半数がこのようなネガティブな心の状態になっています。これでは自分をなかなか肯定できないのも無理はありません。

なぜ暴力をふるう子どもが急増しているのか

自己肯定感が低いと、このように気持ちが不安定になりがちで、落ち込んだり、イライラしたりしがちです。それに関連して着目したいのが、小学校における暴力事件が急増していることです。

友だちから嫌なことを言われたり、嫌な態度を取られたりすると、怒鳴るように言い返したり、つい手を出したりしてしまう。教師から注意されると、泣きわめいたり、暴れたりしてしまう。そうしたキレやすい子どもたちの急増が大きな社会問題になっています。

文部科学省による2019年度の調査データをみると、教育機関における生徒の暴力行為の発生件数は7万8787件です。その内訳は、小学校4万3614件、中学校2万8518件、高校6655件となっています。

かつては荒れる中学生などと言われ、思春期にあたる中学校が飛び抜けて多かったのですが、このところ小学校の件数が急増し続けており、今では小学校の発生件数が断トツに多くなっているのです。

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