グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ、警戒しながらうまく使え」

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日本勢は、「いいデバイスを作れば勝てる」という発想に流れがちです。しかし、もうそこは勝負どころではありません。すべてがつながるデジタルの時代は、車だけを見ていてもダメなのです。もはや車も、スマホやパソコンと同じで、クラウドとつながり、他の車とも交信し、ソフトウェアをバージョンアップしながら進化する工業製品へと変化していきます。

車単体でどんなにイケてる斬新な車を作っても、事故を起こしたり渋滞にハマったりでは進歩がありません。デジタル社会全体を大きく俯瞰して、事故や渋滞から解放されたデジタル交通システムの中の1つの構成要素として車を位置づけていくような発想が必要です。そういう意味では、トヨタがスマートシティをやりはじめたことは、間違ってはいないと思います。

現在、地球上にはまだインターネットにつながっていない人々が半分ぐらいいますが、今後、インターネットにつながることは人権のひとつと解釈されるようになるでしょう。

イーロン・マスクやジェフ・ベゾスは、そのような時代を先読みしているかのごとく、宇宙に何千・何万もの小型通信衛星を打ち上げて、全地球をカバーする通信網を作ろうとしています。

一方、日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません。

GAFAは競合ではなく「インフラ的存在」と割り切る

日本企業がGAFAやイーロン・マスクとまともに勝負しても、とても勝ち目はありません。GAFAは公共インフラとでも捉えて、彼らの裏の顔に警戒しつつもうまく使い倒すのが、今を生き抜いていくためには大切なことでしょう。

現状、GAFAが強くなりすぎて、彼らを脅かすスタートアップが生まれにくいという問題も起きています。投資家も「GAFAに対抗するなんて無理だ」と考え、GAFA対抗のようなベンチャーには投資しなくなっていますからね。

これまで、GAFAは、自分たちでイノベーションに積極投資してきました。私がいた頃のグーグルもそうでした。GAFAはイノベーションの巣窟であり、世界を変えてきたわけです。

しかし、ギャロウェイ氏が指摘するように、あまりにも強大になりすぎると、その力を維持することのほうにエネルギーを使うようになります。守りに入るわけですね。しかしそれは衰退への道です。

今後、政治的な圧力で、グーグルとユーチューブを分割するなどの動きが起きれば、競争が促進されることはあるでしょう。現在のバランスが崩れたとき、GAFAの寝首を搔く企業が現れるかもしれません。ただ、それが日本から出るかというと、やはり難しいように思います。

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