グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ、警戒しながらうまく使え」

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本来そのひずみを解消していくのが政治の役割なのですが、今は逆に政治もひずみを大きくする方向で機能してしまっています。こういった危機に、もっと多くの人が気づき、行動を起こさなければならないのですが、日本人は、その意識が低いために、問題がより深刻であると感じます。

日本から「GAFA+X」が出ない理由

ソニーがEVへの参入を、トヨタがスマートシティや車載OSの開発を発表しています。しかし、日本から本書の言う「GAFA+X」が生まれるのかというと、このままではそれは考えにくいと私は思います。

GAFAの時価総額は、4社でおよそ800兆円、マイクロソフトも300兆円規模、テスラは100兆円規模です。一方、ソニーは十数兆円、トヨタでもピークで40兆円程度です。GAFAやマイクロソフト、テスラなどはすべてクラウドとの連携が得意な企業で、基盤とするユーザーベースが桁違いであるとともに、未来へのストーリーを明確に描いています。

イーロン・マスクは、現時点では、すべてがチャレンジの途中で、まだ真に成功させたといえる事業はありません。しかし、世界中から巨大なマネーを引き付ける魅力があります。彼に匹敵する集金力を持つ人物がそうそういるわけではありませんが、ソニーやトヨタにも時価総額を大きく上げるような夢やビジョンを発信してほしいものです。その昔、ソニーはスティーブ・ジョブズがあこがれた企業でもあったわけですから。

私は、グーグルに入る前はソニーにいました。私が知るソニーは、人がやらないことをやる企業でした。トランジスタが発明されて間もないころ、いち早く個人用のトランジスタラジオを発売し、世間をあっと言わせました。今では、スマホで音楽を聴きながら歩くことは当たり前ですが、そのようなライフスタイルは、ソニーの「ウォークマン」から始まりました。一般ユーザーが気づきもしないような潜在ニーズを掘り起こし、他人がこれまで作ったこともないようなものをゼロから作ってきたのがソニーなのです。

ところが、EVは、すでにみんながやっています。自動走行、コネクテッドカー、クリーンエネルギーなどで自動車産業は大変革期を迎えています。アップルも参入するといわれていますし、今後は、中国勢なども圧倒的な存在になっていくでしょう。その中で、ソニーがどこに勝機を見出そうとしているのかは、今のところ私にはわかりません。

発表を見たところ、「車内をエンターテインメント空間にする」という話です。しかし、車のような移動手段にとって最も重要なことは、人を目的地にできるだけ迅速かつ安全に届ける、ということです。車内を本格的なエンターテインメント空間にするのであれば、完全自動運転も前提になるでしょう。

人の命を預かる工業製品を手掛けるということは、もとよりそれだけの覚悟が求められるということでもありますし、もともとソニーが強みとしてきた領域以外のところに多くのチャレンジがあることは間違いありません。

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