「外国人労働者≠移民」とする日本が陥る罠の怖さ 「現在バイアス」「フレーミング」がもたらす影響
この楽観は長続きするだろうか。将来に目を向けると大きな懸念が存在する。移民受け入れが急拡大してきた一方、あくまで出稼ぎ労働者であり、他国民というフレーミングがその人たちを労働力でなく人間として受け入れる体制を大きく立ち遅れさせているからだ。
ドイツで外国人犯罪比率が高いのは、多くの外国人をドイツ社会から疎外し孤立させた結果だった。日本でも法務省・法務総合研究所の報告書は、2011年の外国人窃盗・強盗犯罪者を精査し、その4分の3は日本語の読み書き能力が不十分であったことを指摘している。
こうした分析に照らすと、事実上の移民やその子どもたちには日本国民であろうとなかろうと、日本人と同等に日本語や日本社会についての基礎知識を確実に習得してもらうことが必要だ。しかし、「彼らはとどまることはない、いつか去る、移民とは異なる出稼ぎ労働者なのだ」と位置づけられてしまった人たちやその子どもへの支援体制は十分でない。
外国人子弟が日本で置かれている状況は深刻
日本の移民受け入れ体制は、国際的にみてどの程度の位置にあるのだろうか。国際比較の材料として移民統合政策指数(MIPEX: Migrant Integration Policy Index)がある。
2020年12月の第5回調査では、52カ国の移民統合政策を8つの政策分野(労働市場、家族呼び寄せ、教育、政治参加、永住、国籍取得、反差別、保健)について、167の政策指標を設け、各国の移民政策研究者が協力して数値化している。
総合評価ではスウェーデンが1位(86点)であり、フィンランド、ポルトガルと続く。アジアでは韓国が19位(56点)で最も高く、日本は35位(47点)にとどまる。教育は33点と極めて低く、将来の日本社会に大きな影響を与えるはずの外国人の子弟が置かれている状況が深刻であることがわかる。
外国人子弟は日本国民ではなく、義務教育の対象とされていない。このため、十分な教育機会が与えられていない。2019年9月、文部科学省は、日本に在留する義務教育年齢(6~14歳)の外国籍の子どものうち約2万人が未就学状態にあると推計した全国調査結果を発表した。
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