「外国人労働者≠移民」とする日本が陥る罠の怖さ 「現在バイアス」「フレーミング」がもたらす影響

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行動経済学の見地から見た日本の移民政策の問題点とは(写真:Fast&Slow/PIXTA)
主要先進国では、公的当局が政策を企画・立案して説明するうえで、経済学がきわめて大きな役割を果たしている。現在のマクロ経済学のモデルでは、モデルの世界に住む人々は基本的に自分の住んでいる世界の経済構造を理解したうえで合理的に行動すると想定されている。ところが、実際の市民は必ずしも合理的期待に沿った行動はしておらず、モデルの示す処方箋に沿った政策は必ずしも期待した結果を生み出してはいない。
そうした現在のメインストリーム(主流派)経済学を「客観的に補完するうえで極めて貴重な知見を提供してくれるのが行動経済学」と語るのが大妻女子大学特任教授の翁邦雄氏だ。では、行動経済学とはどういうものなのか。今回はその知見である「現在バイアス」「フレーミング」について、翁氏が解説する。
※本稿は『人の心に働きかける経済政策』(岩波新書)から一部抜粋・再構成したものです。

定住外国人の増加が日本の人口減少を緩和していた

日本の人口動態の将来像としてしばしば引用されるのは、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計人口の標準シナリオである。

直近推計(平成29年推計)は、コロナ以前のものであり、出生率が1.4程度でほぼ横ばい、定住外国人の流入超過も毎年7万人弱でほぼ横ばいと想定しており、日本が日本人の国として高齢化し収縮していく姿が描かれている。こうした将来像のイメージは日本の企業・家計に共有され、将来への不安感の底流にある、と推測される。

しかし、社人研の標準シナリオは新型コロナウイルスの感染拡大以前にすでに大きく外れていた。

社人研の標準シナリオでは毎年7万人弱でほぼ横ばい、と仮定されていた定住外国人流入超過が毎年激増していたからだ。2016年には14万人弱(標準シナリオの想定流入超過のほぼ倍)、その後も増勢が続いてきた。

総務省の人口推計値(確定値)を見ると、コロナの影響が出る前の2020年2月1日現在の日本人人口の前年同月比が50万8000人の減少であるのに対し、日本の総人口前年同月比は30万5000人の減少にとどまり、その差約20万人は、定住外国人の増加による。

これに対し、新型コロナの感染拡大が進行し入出国の困難度が増していった2021年2月1日現在では、日本人人口が前年同月比で53万8000人の減少になり、総人口も45万2000人減少で、おおざっぱに言えば、日本人人口、総人口どちらで見ても約50万人の減少となっている。それまで定住外国人の増加が日本の人口減少をいかに緩和してきていたかがわかる。

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